3話 ページ4
『おはようアザール、こう顔を合わせるのも久しいね。実は父の訃報が届いたから休暇を取りたいのだけれど…どうだろう?』
そういえばアザールは顎の髭を撫で、少しばかり黙った後何か閃いたかのように申請書にサインをした。
「… 2ヶ月の休暇を許可する」
『2ヶ月?そんなにいいの?長い間取るつもりはなかったのだけど』
「貴殿があまりにも休まずにいるせいで、一部から教令院の働き方を怪しまれている。そのような噂がもし広がりでもすればこちらとしても不都合というものだ」
思い当たる節がないわけではない。確かに約20年間1日も休んでいない。
しかし無理に働いてるわけではないのも事実。
定時に出勤し定時に帰るはちゃんと守っているし、やらなければならない仕事以外はしていないし、やる必要のない業務はそもそも断っている。
ただ、この間マハマトラからほんの少し忠告が入っただけだ。
ーまさかと思いますが、殿堂内で根源の六罪に反する研究でもしているのですか?
ー???何を言ってるの君は。私は仕事してるだけだよ。
ー…だとは思っていました。しかし、いくら貴方が大丈夫とは言っても周りはそうではありません、貴方の姿が毎日仕事場で見かけることが心配だから、たまには休んでほしいのです。元教子としてもお願いします。
いや、この記憶はもっと前だな。
とにかく、私は自分で思っているよりずっと働き詰めに見られているらしい。
教令院の迷惑になっているというなら、大賢者であるアザールの言う通りにしたほうがいいだろう。
それにしても、まさかあのアザールが長期休暇を許可してくれるとはありがたいものだ。
『わかった、君のいう通りにしよう。休暇中の殿堂は任したよ』
「ふん、用が終わったならさっさと行け。私は忙しい」
『うん、ありがとう』
アザール、子供の頃はもっと可愛かったのに。
今は私の上司にあたる人間だから何も言えないが、もしまだ子供の頃だったら少なくとも数週間は殿堂内の資料貸出停止処分だな。
いや、アーカーシャ端末があるから意味はないか。
まあいい。休暇申請が通ったならとりあえずの問題は解決だ。
あらかじめ用意した最低限の荷物をもち、オルモス港へ向かう。
スメールシティから少し歩くが遠いとはいえないそこは常に賑わっている。かつての璃月港を思い起こすそこは私のお気に入りの場所だ。
いやきっと璃月港は今も、なんなら今まで以上に賑わっているのだろう。
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作者名:ぺろりとろろ x他1人 | 作成日時:2023年10月23日 21時