2話 ページ3
家からそう遠くない位置にある教令院は、長く急な坂がずっと上に続いている。
高齢の学者になってくると、教令院から支援をもらいながらここに来ているらしい。歳を取っても腰は元気でありたいものだ。
坂を登り、教令院に入っていく。
何人かの学生が意見交換をしあったり、教授に意見を求めたり、別学派がぶつかり合っていたりするこの学院内は、常にいつも通りだ。
しかし、私の職場はここではない。もう少し進んだ先にある図書館こそ私の持ち場である【知恵の殿堂】だ。
[重要書類貸し出し停止期間のお知らせ]と書いた紙を執務室の扉に貼り付け、大賢者の執務室に向かう為に上の階層へと進む。
休暇申請とあの張り紙があればあとは賢者達がなんとかしてくれるだろう。
グランドキュレーターの仕事の内容とは違い、代理として誰かがやる仕事はそう難しいものでもない。
重要書類の申請は知恵の殿堂の執務室に置けばいいし、調達もしなくていい。
一般資料の貸し出し申請に目を通してみればいいだけだから、やるだけなら教令院の信頼のある学者にでも任せても問題はないだろう。
『まぁ、アーカーシャがあるから申請を出す人もそうそういないだろうけど』
500年前に亡くなってしまったマハールッカデヴァタ様の面影を探し求めた当時の賢者達に作られたアーカーシャ端末。それがまさか、権力で掌握されてしまうようになるとは。
今の世界にはクラクサナリデビ様がいると言うのに。いつまで亡くなった神を求めるのだろう。
あぁいけない。彼の訃報で少し感傷的になってしまってる。
神は果たすべきことを果たして亡くなってるのに、なぜ私はのうのうと生きてしまっているんだろう。
そうこう考えていれば時間が経つのは早いもので、気づけば最上階についた。
教令院上層部の執務室、アザールはそこでマハマトラの誰かと話を終えていたところだった。
すれ違うマハマトラに礼をすれば、アザールはこちらに目を向け、少し目を開いた後いつも通りこちらに顎を見せてきた。
「…グランドキュレーターがアーカーシャも持たず、なぜここに？」
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作者名：ぺろりとろろ x他1人 | 作成日時：2023年10月23日 21時
