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12話 ページ13

絶雲の間はよく風が吹くから、風の翼を使えば慶雲頂から奥蔵山までショートカットできる。
そう思っていた。しかし_


『いくらなんでも吹き荒れ過ぎだろうっ…!!』


_数分前、慶雲頂に誰もいないことを確認し、奥蔵山がある方の崖から風の翼を広げた。
風に乗りながら前へ進み、奥蔵山の山頂が見えた時、予想もしていなかった横からの風に吹き飛ばされてしまった。
着地しようにもどこも崖ばかりで、もし勢いでぶつかりでもすれば軽い痛みではないだろう。


『わ、ちょ、っと待て!落ち着け!!』


何とか風域から外れ体制を整えようと翼を動かしたと同時に、今度は下から突風が吹き、体が強い力で持ち上げられた。
手足も突風のせいで満足に動かすことができない。下には奥蔵山ほどは高くはない岩の山。
仕方がない。風を受けてこのままどこかに飛ばされるよりは、この場で一度落ちてしまおう。
この体なら痛みは感じども、怪我はしない故我慢すれば山頂に登る事ができる。

楽しようとしたのだから自業自得だ。そう言い聞かせなだら翼を閉じ、重力に体を任せた。
せめて痛みを軽減するため元素力を見に纏い、真下の岩へと視線を向けた。

落下して最初に感じるのは全身への痺れ。
元素力のお陰か特に痛みはなく、体にはかすり傷ひとつすらついていない。


『よかった…これといった問題はないな…おっとっと』


体の状況を確認し、すぐに出発しても問題ないことを確認し立ち上がると、視界がぐにゃりと曲がり、自分が立ってるのかわからなくなるほどの眩暈を感じた。
体に力を込め踏ん張らなければ。と、私が考えるより先に体が落ちてしまっていた。

元素力を扱えないほど脳みそが捻じ曲げられる感覚。このまま大人しく落下するしかないか。

目を閉じいつかくる衝撃に備えていると、ふと腹回りに何かが巻かれる感覚がし、その次に落ちていく感覚がなくなった。
誰かに担がれているのがわかり、見知った背中と地面が視界に入ってきた。


『…久しぶり、魈の兄者』

「…我はお前の兄じゃない。…この地へ何しにきた、A」



_____

キャラクターボイス:揺籠の誓いについて

色々要約してしまえば、揺籠の誓いというのは、遠い昔私の祖母が見知らぬ魔神と結んだ婚姻の契約なんだ。
尤も私が継承したのは、呪いに近いものだけれどね!
物理的な影響を受けないだけで、それ相応の痛みや疲労は受けてしまうんだよ。はは、病も症状は感じるけど体は元気ってことさ。チグハグだろ?

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作者名:ぺろりとろろ x他1人 | 作成日時:2023年10月23日 21時

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