11話 ページ12
時刻は早朝。
朝から賑やかな璃月港を横目に、チ虎岩を抜け玉京台の方へと向かっていった。
北へ進み、玉京台の市街を出れば、真っ直ぐ道が続いている。
道なりに沿って進めば帰離原があり、そこを左へいけば絶雲の間があるはずだ。
道を思い出しながら道を踏み締めていく。
途中で見つけたヒルチャールの目を掻い潜りながら先へと進みできるだけだけ戦いは避けて歩いていった。
璃月の港を出発して最初の夜。
絶雲の間の入り口にたどり着くことができた。
そうした時、わずかに足が重くなるような感覚を覚えた。疲労だ。
私の体は疲労に弱い。体に流れる時間が遅い分、疲労を溜めれば溜めるほど数年後数十年後などに不調となって襲ってくるのだ。
一度それで人体が耐え切れるはずのない高熱を出し、1ヶ月布団から動けなかったことがある。
私への危険はこの体のせいで他人へと被害を及ぼす事になる。
それからは休息はしっかり取るようにしているのだ。
『明日はまず慶雲頂を通りながら奥蔵山へ向かおう。夜になる前に奥蔵山の山頂に辿り着ければ上上だな…奥蔵山にいなくても急げば夜をすぎる前に琥牢山へ向かうことができる』
仙人たちは私と話してくれるだろうか。いや、聞いてもらう為にここまできたのだ。
懐にしまってあるそれを服の上から握り締めれば、紙特有の擦れる音が小さく聞こえる。
私がスメールに経つ前にもらった、最後の一枚。
今から会うのは私を育ててくれた家族ではなく、国を守り続けた仙人たちだ。
それを心に刻まなければ。
そういえば、空達は送仙儀式の準備は順調だろうか。
空がいなければ仙人たちが今何をしているかなんて知ることすらできなかった。
帰って来た時、一度お礼の1つや2つはしなくてはならないな。
___________
少し時間は遡り、夕頃。
旅人とパイモンは、往生堂の客卿である鐘離と共に、三杯酔にて講談を聞いていた。
ファデュイ執行官タルタリアの助力のおかげで、雀の涙ほどしかないモラを犠牲にすることなく送仙儀式の準備はほとんど整い、あとは儀式自体を行うのみになった。
自分達の目的まであと少し。そんな時思い浮かべたのは、つい昨晩出会った人物。
今の璃月を聞いて、何かしなければならないと言っていた彼女は、今どうしているだろうか。
結局、ご飯を奢ってもらうだけもらってしまった…次どこかで会えたら、何か手伝いでもしたいところだ。
「…(Aの方も、上手く進んでいるといいな)」
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作者名:ぺろりとろろ x他1人 | 作成日時:2023年10月23日 21時