8. 名前呼び ページ8
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同窓会に行く日。教室に着くと、一目散に渡瀬の元へ向かう。渡瀬は、意味不明、という顔をしていた。…そんな顔、しなくてもいいのに。と思う心を隠して、言った。
「ねぇ、渡瀬はさ、」
「それ、やめろよ」
「…え？」
突然、渡瀬の方が意味不明な事を言ってきた。“それ、やめろよ” って…。何よ。久しぶりに話してやったのに。私は、どうでもいい、という感じで彼を見た。
「幼馴染にもなって、“渡瀬” とか。前、男友達に笑われたんだよ」
「いいじゃん。ずっと前からそうだったんだから」
「いや、俺笑われたくないし」
「え、私、渡瀬のせいで笑われてる様なもんだよね」
「櫻川はどうでもいいんだよ」
「ひど。渡瀬みたいな奴は、彼女できないじゃん。頑張れー」
思いっきり棒読みでいうと、渡瀬はため息をついていた。…なによ、その私が悪いみたいな言い方。下の名前で、呼んであげないんだからね。そういう目を向ける。
「あー、悪いって。じゃ、実結ー？」
「っ、なんか腹立つ！」
「いやなんでだよ、実結？」
「やめて、実結って呼ばないで」
嫌がっていると、渡瀬が「はぁ？」という顔をする。…なに、その顔をしたいのは、私の方なんだけれど。
「お前。話聞いてた？ 友達に笑われるのだけは俺、嫌なんだよ。下の名前で呼べよ」
「はぁー、これだからモテないんだよ、修弥は、」
“もっと優しくしなさいよ” という前に、修弥はそっぽを向いて、“モテるのとか、嫌だし” と言った。まるで、夏希みたいだ。夏希も、同じ事を言っていたのを覚えている。
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作者名：琴乃 | 作成日時：2017年7月17日 23時
