二口【現在形じゃもう言えない】 ページ2
二口と出逢って、恋をして。
あたしの高校生活は華のあるものになった。
一年生の時に同じクラス、隣の席。
自然と話すようになって、それとなく打ち解けていった。
生意気で、憎たらしくて、お調子者で。
でもとてもカッコよくて、実は優しくて。
だんだんと、そんな彼に惹かれていった。
その気持ちに気付いて、伝えずにはいられなくなったあたしが告白。
なんという偶然か、二口もあたしのことが好きだったらしく。
めでたく、付き合うことになったのが一年生の冬。
どちらも気は強かったし、似たような性格だったから喧嘩も多かった。
それでも今まで別れなかったのは、喧嘩の度にきちんと仲直りをして、修正をしてきたから。
大好きだったから、ずっと付き合ってこられた。
好きなだけじゃ解決できない問題が、今目の前に立ち塞がっていて。
それに頭を悩まされている。
「……本当に県外行かねえとダメなの？」
「残念なことに県外じゃないと、あたしの頭じゃダメだった」
なんとも言えない気まずい雰囲気。
大事な話があると、呼び出したのはあたし。
話っていうのは、これから先のこと。
あたしたちの通っている工業高校では、進学ではなく就職する人がほとんど。
自分だって勿論そのつもりだった。
ここに入学した理由は、行ける高校がここくらいだったってことと、家から近かったから。
なんとなく進学して、なんとなく就職するつもりだったけど。
どうしても、したいことができて。
その為に、二年生の時から勉強だって頑張ったし、生活態度だってちょっとは気をつけた。
でも、それだけじゃ元々の頭の悪さをカバーできなくて。
学びたい学科があって、あたしでも進学できそうなのは県内には無く。
県外に行かなければならない、と。
それを二口に伝えるために、呼び出した。
夏休みの練習中、申し訳ないけど。早めに言っておくことに越したことはない。
「こんなこと急に言ってごめん」
「あー、いや。別にそれはいいけど……」
明らかに戸惑っている二口。
そりゃあそうだ。
あたしが進学するなんて、思ってもなかったんだろうから。
「まあ、遠恋でも会えねえことはないしな。
…大丈夫だろ」
「……そのことなんだけど、さ」
言いたくないけれど、重い口を開いた。
「…卒業したら、もう、別れない？」
怖くて、顔を見ては言えなかった。
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作者名：灯彗 x他6人 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月2日 15時
