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渡辺side
Aセンパイと別れた後、走って家に戻った。
何となくむしゃくしゃしてベッドに倒れ込む。
……センパイと付き合えたら良かったのにな。
気が付けば、笑えてくるぐらいセンパイに依存している自分がいて。
馬鹿馬鹿しいと思う反面、センパイの存在の大きさを想い知らされる。
俺がAセンパイのことを好きになったのは、今から半年前。
高校に入学したばかりの俺は周りに馴染めずにいた。
俺以外の奴らは元々顔見知りが多いみたいで、既にグループが出来てて。
その中に「俺も入れてよ」なんて割り込む気力はさらさら無かった。
そんな時だった。
「ねぇ、君サッカー部に入ってみない？」
孤独な俺に声をかけてくれたのは、栗色の髪をおだんごにした姿がよく似合うセンパイだった。
でも、突然話しかけられたことにびっくりしすぎて一回スルーしてしまった。
「そこの塩顔イケメンくんってば！」
渡「あ、俺っすか」
「自分がイケメンって自覚あるんだね笑」
センパイの第一印象は、よく笑う明るい人。
あの時もセンパイは弾ける笑顔を見せてくれた。
たったそれだけなのに、一瞬で心を射抜かれたんだ。
「君が体育の授業でサッカーやってるの見たんだけど、結構センスあったからさ」
良ければ、体験入部だけでもしてみない？
なんて上目遣いで言われるもんだから、断れる訳もなく付いていくことにした。
グラウンドまでセンパイが案内してくれたんだけど、その時もセンパイのことが気になるばかりで。
何ていう名前なのかな。
何年生なのかな。
なんて色々と考えてた。
……我ながら軽く気持ち悪いな笑。
「おーい！ 新入生確保してきたよー！」
センパイが勢いよく開け放った部屋は、サッカー部の更衣室。
中にはもうイケメンだらけだった。
??「A、誰そいつ」
「その言い方はないでしょ。……ってか、私も名前聞いてなかったね笑。教えてくれる？」
俺のことを"そいつ"呼ばわりした筋肉質な野郎には腹が立ったけど、センパイのためだ。
１度わざとらしく溜め息を吐いて、センパイを見据えた。
渡「渡辺翔太です。一応サッカーは得意な方なんで──」
？「え、翔太！？」
部室の端っこの方から懐かしい声が聞こえた。
声のした辺りを見ると、そこにいたのは──
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作者名：美月 | 作成日時：2020年1月31日 22時
