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しかし少年は
前回のようにパニックに陥ることなく、
諦めたように質問に答え続けた。



『恋人がいたことも結婚することも知らなかった』
『それで頭にきて殺した、と?』

『それだけじゃない…』

少年の声は震えている。


『どうして俺にあんなことしたんだって聞いたら…
愛を知らないかわいそうな子だったからって』


子どもが泣くのを堪えたような、
絞り出すような声だった。


『ずっと母親や姉や恋人として当てがってたものが
同情からくる偽物だって分かった瞬間、
もう駄目だった。いつの間にか体が動いてた』


仕事に個人的な感情移入は厳禁だ。


しかし、取調官は言葉を失い
しばらく次の質問をするのを忘れていた。

自分でもきっとそうだったかもしれない、
とジュンミョンもまた思った。





報告書によると、
記録が検察に送られた後、少年の勾留が決定。
検察側でも捜査が行われ家裁は事件を受理。

そして今に至るというわけだ。


勾留中も少年の精神は不安定で
パニック症状や自傷行為が見られたため、
止むを得ず安定剤投与…との記載あり。


(手強いな…)


バトンが自分に回ってくる。

その責任を果たすべく、
ジュンミョンは面接の準備を始めた。








【少年A 面接(1回目)】


10分前行動を心掛けているジュンミョンは
先に案内された部屋で待機していた。


そして数分すると、
ドアが開き少年が両脇を抱えられて入ってきた。

しかし、これは拘束のためだけではく
衰弱しているからだということはすぐ分かった。


「……」


少年は明らかに疲弊しきっていた。

充血した目、こけた頰、切れた唇…
事前資料の写真とは印象がまるで違う。


椅子に座った少年と目を合わせると、
いつもの手筈で自己紹介から始めることにした。


「…こんにちは。僕は調査官の、」

「この調査書次第で
審判の結果が違ってくるって聞いた。
あんたは俺をどうしたいの?」

「……」


いきなりこんなことを言われるとは思わず
ジュンミョンは面食らった。


「…僕の感情は関係ない。ただ事実を、」

「つけ込まれたかわいそうな子だって思ってる?
妊婦を殺した最低の殺人鬼だって思ってる?」

「だから、」

「後者だと嬉し…」

「僕は弁護士じゃない!!」


最後まで喋らせてもらえない苛立ちから
思わず彼は大声を出した。


すると少年は驚く様子もなく笑った。
まるでお手並み拝見でもしているかのように。


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設定タグ:EXO , エクソ , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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ゆう(プロフ) - とってもキュンキュンしました!どの作品も大好きです!(;_;)マイペースにまたお話の更新待ってます^_^ (2018年1月15日 23時) (レス) id: 08fbd2dc26 (このIDを非表示/違反報告)
かのか(プロフ) - 可愛らしい、べくとのお話とジョンイニズムスピンオフ。こんなにも違うものが両方面白いって。凄い。 (2017年1月16日 14時) (レス) id: c8ddff6bd6 (このIDを非表示/違反報告)
アイ(プロフ) - ジョンイニズムとても衝撃的な作品で今でもふと考える事があります。スピンオフありがとうございました! (2017年1月15日 15時) (レス) id: 61651178cb (このIDを非表示/違反報告)
kou(プロフ) - ジョンイニズム一気読みしてしまいました、、なんか色々と衝撃すぎて語彙力のない私には上手く感想が伝えきれないんですがすごくおもしろかったです、、 (2017年1月15日 2時) (レス) id: bd7f07117d (このIDを非表示/違反報告)
みの(プロフ) - ジョンイニズムのスピンオフ(TT)嬉しすぎます、ほんとに、、!!ほんとにありがとうございます(TT)国家試験頑張れます(TT)何度も言ってますが 笑 ぺっぱーさんの書くジョンインが1番好きです(TT)ありがとうございます(TT) (2017年1月15日 0時) (レス) id: cc979909b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺっぱー | 作成日時:2017年1月7日 18時

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