短編集「ケースバイケース」３

サイレントカラー (BH) ページ19

※暗めのお話です。時期が時期なので、苦手な方はご遠慮ください。
※作者は医学の知識が皆無ですので、
多少の矛盾は目をつぶってくださると幸いです…









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その日の空はひどく青かった。




「ナヨン先生の後任？」


私が朝から素っ頓狂な声を出したのも仕方ない。

なぜなら、休み明けに突然
新たな患者の担当につけられることになったから。


「担当変わりたいって泣きつかれたのよ。
今日から有給消化して実家帰るって」

師長は苦笑いすると私にカルテを手渡した。




私はカルテに目を通すと純粋な疑問をぶつけた。

「どうして精神の患者がこの病棟に？」


すると師長は、
周囲を見回した後にこそっとこう言った。


「ビョン議員の息子さんなの、その子。
だけど選挙が近いでしょう？
だから世間体を気にしてだろうけど、
精神病棟には断じて入院させないって言うのよ。」

「……なるほど」


ああ、なんて面倒臭い物件…




______________________『サイレントカラー』









その患者は窓のそばに立って空を眺めていた。


雲ひとつない真っ青な空。
目を細めたくなるほど光はまばゆい。


だけど私は“空が綺麗ですね”と
声をかけることはしなかった。



「ビョン ベクヒョンくん」


点呼のように私がそう声を発すると
少年…いや、青年は静かにこちらを向いた。

そして微かに口角を上げる。


「“空が綺麗だね”とか言わないってことは、
ちゃんとカルテ読んできたんだ」

「今日から担当になるキム Aです。
よろしくお願いします」

「俺のプロフィールはカルテ参照ってことで。」


日光に透けそうな白肌に黒髪が映える彼は、
椅子に腰掛けながらそう言った。




ビョン ベクヒョン、18歳

今注目されている議員の二番目の息子。


彼は自傷行為を繰り返し、
入院を勧められるが父親が拒否。

しかし1ヶ月前、
自傷行為を止めようとした父親に
切りかかろうとし、取り押さえられる。

だがもちろん議員の力でそのことは内密にされ、
ようやく入院。



今は家族同意のもと病室は外から施錠。

本来なら付いていない鉄格子も
父親が無理を言って取り付けさせただとか…


まるで精神科の個室だけ
この建物に移動してきたかのようだ。


そんな彼の病症は…


「で、どうせ信じてないでしょ？
赤以外がモノクロに見えるなんて」


私を見透かしたかのように
ビョンベクヒョンはそう吐き捨てた。


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