fin ページ13
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【少年A 審判】
少年審判は刑事裁判と違って小さな部屋で行われ、原則非公開だ。
部屋には裁判官、書記官、調査官、付添人のみ。
少年はやはりまだ眠れていないのか、
目が充血して疲れ切った顔をしている。
沈黙を破るように裁判官が口を開いた。
「それでは始めます。まず、…」
少年は終始落ち着いていた。
応答を求められたときは簡潔に答え、
それ以外はただ目の前の空間を見つめていた。
「最後に何か言っておきたいことは?」
「ありません」
少年はあまりにも簡単に言ってのけた。
裁判官が言い渡したのは少年院送致だった。
そしてそれは、ジュンミョンが
報告書に記載した意見と等しかった。
ジュンミョンは立ち上がった少年と目が合った。
その目は死んでいて、
まるで死刑判決を言い渡されたかのような表情だ。
“実刑くらわなかったら、
あんたは嘘つきってことになるよ”
少年に嘘つきだと思われていると思うと、
ジュンミョンはその目を逸らしてしまった。
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その後少年院を何度か尋ねたが、
少年Aは何事にも真面目に取り組んでいた。
「やあ、こんにちは」
「…また来たんだ」
剥げた人差し指の爪は
不恰好に生えてきている途中だ。
だが、今度は親指の爪が無くなっていた。
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少年院を出て工場に就職してからも会いに行った。
しかし、彼はある日突然姿を消したと聞いた。
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それから何年も経った後、
暴力団による殺害事件のニュースを目にした。
『遺体には絞殺された痕のほかに
胸にばつ印を描いたような傷があり…』
ふと、少年のことを思い出した。
爪が剥がれるまでバツを描きたがる少年のことを。
彼は今どこでどのように暮らしているのだろうか。
あのときの自分の選択は
間違っていなかったのだろうか…ー
“俺ってそんなにかわいそう?”
あの問いかけにどう答えるべきだったのか、
今でもジュンミョンはよく分からないのだった。
そんな自分に嫌気が差した彼は、
かつての少年のように机に×を描いてみた。
生えかけの爪を思い出して、涙が出た。
『sympathy』〜fin〜
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ゆう(プロフ) - とってもキュンキュンしました!どの作品も大好きです!(;_;)マイペースにまたお話の更新待ってます^_^ (2018年1月15日 23時) (レス) id: 08fbd2dc26 (このIDを非表示/違反報告)
かのか(プロフ) - 可愛らしい、べくとのお話とジョンイニズムスピンオフ。こんなにも違うものが両方面白いって。凄い。 (2017年1月16日 14時) (レス) id: c8ddff6bd6 (このIDを非表示/違反報告)
アイ(プロフ) - ジョンイニズムとても衝撃的な作品で今でもふと考える事があります。スピンオフありがとうございました! (2017年1月15日 15時) (レス) id: 61651178cb (このIDを非表示/違反報告)
kou(プロフ) - ジョンイニズム一気読みしてしまいました、、なんか色々と衝撃すぎて語彙力のない私には上手く感想が伝えきれないんですがすごくおもしろかったです、、 (2017年1月15日 2時) (レス) id: bd7f07117d (このIDを非表示/違反報告)
みの(プロフ) - ジョンイニズムのスピンオフ(TT)嬉しすぎます、ほんとに、、!!ほんとにありがとうございます(TT)国家試験頑張れます(TT)何度も言ってますが 笑 ぺっぱーさんの書くジョンインが1番好きです(TT)ありがとうございます(TT) (2017年1月15日 0時) (レス) id: cc979909b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺっぱー | 作成日時:2017年1月7日 18時