短編集「ケースバイケース」３

泳がせたがり (BH) ページ1

.
.


男女の友情は成立するか？


答えは「イエス」だと私は思う。





前を歩くそいつの背中。


「おいこらクソベク」


女性らしからぬ言葉とあわせて
後ろから蹴りをお見舞いしてやると、

「いって！なんだよ！！」

振り向いたそいつは大げさに痛がってみせた。


「あーあ、また始まったよ」

と笑うチャニョルとガユンを無視して
私はビョンベクヒョンに追撃をかけた。


「あんたでしょ！
私の背中に付箋貼ったの」

するとベクは一瞬思い出したような顔をして
次の瞬間には吹き出した。


「ほらやっぱり！
おかげで先輩に笑われたんだから！」

「は！ざまーみろ！」

謝るどころか舌を出して笑う。小学生か！


「こんのガキ！チビ！ハゲ！」

グーパンチと足で躊躇なく攻撃しても、
ベクは「いて、いて」と言いながらも
まだ笑っている。


しかし、

「ごめんって！昨日買ったソフト持ってくから！」


その言葉に私は攻撃を止めた。ピタリと。


「…ほんと？」

「うん、まじ。朝から並んだの」


降参とでもいうように上げられた両手。

私も右手を上げると、
ベクの右手がいつものように合わさった。


ただし、

ロマンチックにそっと合わさったわけではなく、
なかなか軽快なハイタッチだ。



「…あんたら馬鹿？」

一連の流れを黙って見ていたガユンが
呆れた顔をしてそう吐いた。


「ごめんねガユン、馬鹿ベクがさ〜」

「いや馬鹿はお前だろ。
変な付箋くっつけたまま、」

「はあ？！それはあんたが」


また論争が始まりそうな中、
聞くのが何度目かも分からない台詞を
チャニョルが言った。


「もうお前ら付き合えば？」

「「それはない！！」」


そしてハモってしまうのも何度目だろう。



ビョンベクヒョンは私の悪友だ。



_____________『泳がせたがり』








「ベクってほんとAのこと好きだよね」


ベクとチャニョルと別れた後、
ガユンはまた呆れた顔でそう言った。


「そりゃそうでしょ、ゲーマー仲間だし」

「や、そーいうんじゃなくてさ。女として」

「はあ？」

思わず素っ頓狂な声が出た。


「どう見ても小学生男子の友情じゃん」


ベクとは同じ大学同じ学部の同級生だ。

新入生歓迎会で偶然席が近くて
マニアックなゲームの話で意気投合して、
そっからなんだかんだ仲がいい。


「Aはそう思ってるかもしれないけど
ベクは違うと思うんだよね〜」


恋愛マスター(自称)のガユンが
そんなことを言うとなんだか怖い。



.
.

2→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す