【HQ】美しいものが好きその４！！！ (ページ12)

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恐れるページ12

一つ目。

『助走をつけて、壁まで走ります』

二つ目。

『跳びます』

三つ目。

『柵を掴んで、越えます』

そして着地し、振り返る。

『これでギャラリーまで来れます』

瀬「待て、本当に待て！」

天「巴チャンそれ普通の人できないからネ！？」

川「さすが巴だわ」

牛「……鍛えれば、俺も……」

大「若利、アレは異常の範囲だからな」

白「……問題は跳んだ高さじゃなくて、大人数の前で跳んだことだと思うんですけど」

隼「あー……」

下に飛び降りて、頭を抱える皆さんの元に戻る。

どうやら、先日の練習試合でギャラリーまで跳んで上がったんが問題らしい。

私にはよう分からんけど、ただの人間が跳び越えるには、あれは高過ぎだとか。

『あの、すみませんでした……』

瀬「ん、いや、お前は悪くねぇよ、うん。全員が注目してたわけじゃねぇし、知り合いとかじゃなきゃあんま覚えられてねぇって」

五「でも、青城の人達は……」

五色くんが言い切る前に監督さんが入ってきて一喝、皆さんは慌てて練習に戻っていった。

椅子に座らはった監督さんは、あまりあのことを気にしてはないらしい。

練習試合の選手達の行動を観察した結果を持って、監督さんのとこへ行く。

それに関しての質問に答えながら、ふと思い出した。

『……そういえば何や知りまへんけど、日向くんと影山くん見ましたわ』

「はぁ！？」

「……烏野のか」

すぐ近くで練習してた瀬見さんの叫び声を気にせず、監督さんに頷いて答える。

『たまたま練習試合の日ぃに偵察でも来たんか、知ってて来たんかはわかりまへんけれど』

傍観者やない、喰らうような目ぇで試合を見とった。

だからこそ気付いて、今、報告している。

あの目はそういう、ああいてはるなぁハイ終わりで済まされん目ぇやった。

「……お前が気にするような奴らなのか」

牛島さんに飲みもんとタオルを渡した時に、尋ねられる。

俺には分からない、とでも言いたげな彼にそうですね、と返した。

彼らと戦うのは、私やないのに。彼らと戦って、誤魔化しのきかん勝敗をつけられるのは、牛島さん達やのに。

私は牛島さん達が彼らに勝てなくなることを、負けてしまうことを、恐れている。

どちらが勝ったって、どちらの美しさも損なわれはしない。

自分が負けるでもない、誰かの美しさがなくなるでもない。

そうやというのに、私は今、それをひどく恐れていた。