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「ヌナ、ちゃんと座っていいよ」
「…重いし」
「重くないよ、ほら早く」
ジョングクは背もたれに置いた私の両手を掴んで、自分の首元に回した。全体重を彼に預ける形になり、より一層そわそわする。
「あー、やばいなこれ」
自分で要求して来たくせに目を逸らさないでよ。…恥ずかしいのは私だよ。
「…ヌナ、ぎゅってしていい？」
「いちいち聞かれると恥ずかしいんだけど」
ジョングクはぎゅっと目を瞑ってふるふるっと小刻みに震えた後、私の腰に手を回してぐっと抱き寄せる。
胸の辺りに顔を押し付けてくるから、やんわりと肩を押し返して距離を保つ。
「離れちゃやだ」
「…注文が多いって」
ジョングクは顔を上げて、私を見上げながらふふっと笑って腕の力を強めてまた腰を引き寄せるから目のやり場に困って、顔を背けた。
静かな部屋の中こんなにも近くに居ると心臓の音が伝わってしまいそうで、落ち着かない。
「ヌナ」
「これ以上注文は受け付けないよ」
「ヌナー」
「…もう、何」
人の事を呼ぶだけ呼んで、俯いたまま何も返して来ない。
「ジョングク？」
「我慢…したほうがいいよね」
「え？」
「俺今人生で1番自分と戦ってる」
「何の話」
「…寝室行く？」
やっと意味を理解して、急いでソファから離れると彼は困った顔してそばにあったクッションを自分のお腹の上に乗せた。
「ちょっと！変態」
動けないジョングクに鉄拳を喰らわせようと鬼の形相で近寄る。
「いや、本当に！本当に違うって！」
「何が違うのよ馬鹿」
「我慢したじゃん、逆に褒めて欲しいくらいだよ」
「ジョングクが抱っこさせてとか言うからこうなったんでしょ」
「ヌナが本気出してくるからでしょ！」
「…私、何もしてないじゃん」
「してる、本気出してきた」
「してない！人のせいにしないでよ」
「ヌナのせいだよ！ヌナが…可愛すぎるせいだよ」
「なっ…馬鹿じゃないの」
2人して目も合わせられないくらい照れて、馬鹿なのは多分今顔真っ赤になってる私の方だ。
「何、朝っぱらから喧嘩？」
「テ、テヒョンイヒョン…居たの」
言い合いに夢中になってて、階段を降りて来たテヒョンに2人とも気付いてなかった。
「今起きたとこ、ジミナは？」
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、一口飲むとテヒョンは大きな欠伸をひとつする。
「ジミンなら私の部屋でまだ寝てる」
「は？」
.
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作者名：芍薬
| 作成日時：2022年3月31日 12時
