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冷静に回想を始めたら、ジョングクの首周りの肌の柔らかさとか筋肉質な胸板とか、…髪の匂いとかだんだんと思い出して今更恥ずかしくなってきた。
ああ、そうだ。私ジョングクの首に腕回したりして…完全に失態だ。
恥ずかしさから熱が顔に集まってきて、火照った顔にシャワーを浴びて落ち着かせる。
忘れよう、うん。眠かったからもう仕方ない。
そう割り切ってシャワーを止めて、着替えを済ませた後、歯を磨きながらバスタオルを被って髪をわしゃわしゃと拭い、洗面所を出た。
「あ、ヌナおはよ」
大きなソファからゆっくりと体を起こし、眠そうな顔のジョングクがこちらを見て優しく微笑む。
「ジョングク、おはよう。あの…昨日運んでもらってごめんね」
「んーそうだね、大変だった」
いいよ、大丈夫だよって返ってくると思ったら予想外に冷たい返事。…もしかして怒ってる?
「…だよね、ごめん」
「大変だったから俺のお願い一個聞いてもらっていい?」
「あ、うん。出来る事なら、」
真顔だったジョングクが口角を上げて、両手を私に向かって広げてじっと目を見てくる。
「…何?」
「もう一回抱っこさせて、ヌナ」
「は?」
「お願い聞いてくれるって言った」
「そうだけど…」
「だから、はい。抱っこさせて」
ヒョン達まだ寝てるから、と付け足し両手を合わせてお願いされる。
とんでもないお願いに狼狽えて固まっていると、ジョングクは自分の太ももをとんとんと叩いてしきりに誘導してくる。
「ジョングク、…ちょっとそれは」
「ヌナお願い。俺今一生のお願い使う、使うから。ね?」
上目遣いで真っ直ぐ見てくるから、これ以上逃げられないと静かに覚悟を決めた。
2、3歩近付くとジョングクが私の腕を掴んで引き寄せるからよろけて着地した片膝の重みでソファがギシッと音を立てる。
ジョングクの右手が太腿の裏辺りに添えられて、もう一方の膝もゆっくりとソファに預け彼の膝の上に控えめに座り体重を掛けないように背もたれに手をついて、ジョングクを見下ろす。
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作者名:芍薬 | 作成日時:2022年3月31日 12時