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予想外の席割りに驚いて、ジミンの顔をじっと見る。
話し終えて、ジョングクは運転席へ乗り込みジミンは私の背中をとんと叩いてにやりと笑う。
この男…何か勘付いて楽しんでる。直感的にそう思った。
「ヌナ?行きますよ」
「あ、ごめんごめん」
ジョングクに促されて私も車へ乗り込み、シートベルトをぐんと伸ばす。
あれ…バックルが見つからない。
車はゆるりと走り出したのに、未だ見つからないバックルをシートの奥の方まで探す。
「何やってんの」
見兼ねたテヒョンが声を掛けてきて、はめる所がないと説明すると私の上を通りシートの端へと手を伸ばすから必然的に身体が密着する。
思わず息を殺して、肩に力が入る。早く見つかれ、お願い。
「ん、あった」
その距離で見上げられたら目のやり場に困るんだってば。
「あ、…ありがとう」
カチャリと音がしてテヒョンが離れると細く長く静かに息を吐いた。バックミラー越しに目を細めたジミンと目が合いキッと睨み返した。
「ジミナー、なんか流して」
「テヒョンアのプレイリストでいい?」
流れてきた曲は今1番心を抉るものだった。
"Just the Way You Are"
「ヌナー」
ジョングクに呼ばれて、運転席と助手席の間から顔を出す。
「後ろ寒くない?温度上げましょうか」
「少し寒いけど、ココアあるから大丈夫」
私の口から自分が買い与えたその名前が出るとジョングクは満足そうに笑う。
元の位置に戻ると、テヒョンが運転席の後ろのポケットから深緑のブランケットを取り出して広げた。
それを半分私に掛けて、もう半分は自分の上へと敷く。
「ジョングガ、ブランケット出したから温度上げなくて平気」
「あ、はーい」
ありがとうと言うとテヒョンは頷いた後、窓の外を眺め始めた。
車内に流れるあの曲が後半に差し掛かる頃、ブランケットの下でもぞもぞと手が伸びてきてやがてそれは私の左手を捕まえる。
驚いて、テヒョンの顔を伺うと絡めた指の温度とは裏腹に、彼はこちらに見向きもせず流れる景色を見たまま。
"君に信じて貰うにはどうしたらいい?"という歌詞が耳に残った。
どういうつもりなの、戸惑いと騒がしく鳴る心臓とでさっきからずっと心が忙しなく揺さぶられる。
テヒョンは窓にもたれて瞼を閉じる。
あの曲が終わり、アップテンポの音楽に変わったタイミングで私は自分の左手を開いて絡まった指を解こうとするけどそれもすぐに力でねじ伏せられて敵わない。
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作者名:芍薬 | 作成日時:2022年3月31日 12時