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意味もなくボクサーパンツを広げて見せてきて、口を四角くして笑うから呆れて私も笑っちゃう。
「私期待してた訳じゃないから」
「そう？俺だけかー、ドキドキしてたのは」
「もう、からかわないで」
ファスナーを閉めて、鞄をとんと一度叩いてテヒョンは私の隣へ座った後距離を詰めてくる。
「…何」
「やっぱ今のうちに独り占めしておこうかなって」
「テヒョン、近い」
テヒョンの胸を押し返して目線を逸らす。
「ふふ、ごめん。この前みたいな反応がまた見たくて」
「支度出来たなら行こ」
「はいはい、車回してくるから部屋の鍵閉めて来て」
テヒョンは鞄を2つ抱えて先に出て行く。
しんと静まった部屋から私も出ようとソファから腰を上げて、玄関に向かった。
キッチンカウンターの横を通った時、くしゃくしゃに丸められた紙ゴミ箱の近くに落ちているのを見つけ何気なく拾い上げた。
一目みてすぐに分かった、見てはいけないものだったって。
可愛らしい文字で"また来るね"と。
どくん、と脈打つ。元の場所にそれを戻して2、3歩後ずさる。明らかに女の人の文字だった。
収まらない胸騒ぎをどうにか落ち着かせようと、玄関で靴を履きながら深呼吸する。足元に目線を落とした時、シューズラックとの隙間に黒いヒールの高い靴が目に入った。
この嫌な予感は、きっと間違いなく…
まるで痕跡を消すように、慌てて隠したみたいな状況証拠を目にしたらそう思わざるを得ない。
「…元、彼女じゃないじゃん」
私に問いただす権利などないけど、あの時私を誰かの代わりだと思ったことはないと言ったテヒョンの言葉の意味を履き違えていたんだと思うと、自分に嫌気がさして笑えてきた。
別れて以来会っていないと言ってたのも嘘だったのかもしれない。テヒョンは嘘が上手いから。
私は特別だって意味じゃない、既にテヒョンの心の中には他の人がいるから代わりにはなれないって。きっと、そういう意味だったんだ。
「…何、どうした？」
車から降りて私を見るなりそう声を掛けてきた。
助手席へと誘導され、私が乗車するとテヒョンは優しく扉を閉めて運転席へと乗り込む。
「具合悪い？」
何も答えなかった私に、聞き方を変えてもう一度質問してきた。
「ううん、平気。何でもない」
「そう？なら良いけど。ジミナ達駅で拾うよ」
「うん、分かった」
車はゆっくりと動き出した。
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作者名：芍薬
| 作成日時：2022年3月31日 12時
