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「人があんなに小さく見える」
下を覗き込んで、私がそう言うとジョングクも同じように覗き込んだ後もう少しでテッペンだねと言う。
「そうだね」
「え、ヌナ。それだけ?」
「…それだけって?」
「観覧車にカップルで乗ったらテッペンでするでしょ」
「何を」
「何をって、…キスを」
「殴るよ」
いひひと子供みたいに笑って、ジョングクは私の手をぎゅっと握りなおす。
夕陽に照らされたジョングクの横顔が綺麗で、少しそのまま眺めた。
「俺も結構緊張してるんだよ」
「そうは見えないけどね」
「ほら、ね?」
繋いだ手を自分の胸元に当てるからジョングクの鼓動が伝わってくる。
その余裕とは裏腹にドクドクと早いリズムを刻む心音が可愛くて、頬が緩んだ。
「ふふ、本当だった」
「だから言ったでしょ、ヌナと一緒に居るといつもこんな感じ。すっごい緊張しちゃうんだよ俺」
それ以上何も言わず、夕陽を眺めるジョングクと同じように私も静かに沈んでいく夕陽を見ていた。
観覧車が地上に到着して、待ち合わせ場所に向かう途中までジョングクは手を繋いだままだった。
遠くにジミンとテヒョンの姿を見つけて、どちらからともなく自然とその手を解いて何事もなかったかのように合流した。
ジョングクは私と目を合わせる事なく、ジミンの肩を組んで駐車場へと歩いた。
スーパーに寄って買い物を済ませ、大量のビニール袋を抱えて宿に着いた頃には陽も完全に落ち辺りは真っ暗。
順番にシャワーを浴び、代わる代わる夕飯の支度をして私が洗面所から出てくると3人とも異常にテンションが高く、飲み始める準備は万端の様子。
「さあ座って、乾杯しよ」
長い夜の始まり。
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作者名:芍薬 | 作成日時:2022年3月31日 12時