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返事をする前に電話は切れて、ツーツーと虚しい終話音が耳に響く。
お店の扉が勢いよく開いて、両手いっぱいにユンギさんへの愛を携えたホソクさんが帰ってきた。
「アミちゃん、お待たせ。もう上がっていいよ」
「ユンギさんにお大事にって伝えてくださいね」
「うん、了解。お疲れ様」
テヒョンの家はお店からだと10分圏内のマンションで前に一度ジミンやジョングクと尋ねた事がある。
あの日は2人が居たからそんなに感じなかったけど、こんなに静かな一本道っったかなって。初めてこの道を歩くような気持ちになった。
ぽつんぽつんと等間隔に置かれた街灯を辿って歩みを進めた。
角を曲がって、テヒョンのマンションが小さく見えた頃前の方からこちらに走ってくる人影が見えた。
その人は濡れたままの髪を揺らして息を切らし、私の目の前で足を止めた。
「テヒョン、迎えに来てくれなくても良かったのに」
「暗いし道分かんないかなと思って」
そう言って鞄を取り上げる。
「あいつらにはさっき連絡したから、俺の支度が終わったらもう出れるよ」
「急かしてごめんね」
「ジョングガに電話したら音割れるくらいでかい声で喜んでた」
「なんか想像つく」
マンションのエレベーターを上がって、テヒョンが部屋の鍵を開けて扉を開ける。
「とりあえず入って待ってて」
テヒョンの部屋に1人で来るのは初めてで、どこに居ていいか分からずそわそわしながらソファの端にちょこんと座る。
バスキアの絵やBE@RBRICKのフィギュアが飾られたお洒落な部屋を見渡して、住む世界が違うような気もした。私の殺風景な部屋とは大違い。
「なんか飲む？」
「あ、ううん。平気」
私の返答に小さく何度か頷き、テヒョンはショルダーバッグに荷物を詰めていく。
「なんでそんな静かなの」
身動きすらとらずに居る私を見て笑いながら畳んだパーカーを鞄に押し込むテヒョン。
「人の家って緊張する」
「来た事あんじゃん」
「それはみんなで来たから」
「あー、そういうことか」
床に座ってたテヒョンが奥の部屋から洗濯物を抱えて戻ってくる。
「俺と2人だからなんかされるかもって、そういう意味？」
「…そうは言ってないけど」
「期待させちゃってたらあれだけど、俺は意外と順序は守るタイプ」
「よく言うよ！この間…」
「あーじゃあ、シラフの時は守るタイプに訂正する」
.
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作者名：芍薬
| 作成日時：2022年3月31日 12時
