Into you 【JK】

53 ページ3

広い広い海の上、大きな波が背後から迫ってきて、思いっきり泳ぐけど飲み込まれて海の中に引き摺り込まれる。
光の差す水面に手を伸ばすも、体はどんどん沈んでいく。


「このまま死ぬなんて嫌だ！」


自分の声で、目を覚ました。夢だった、良かった。
大海原だとか言って、暴れ疲れて寝たらロクでもない夢見た。ああ、最悪な気分だ。

もう一回寝てやる。



「死なんやろ」

「ほわ、ビビった」

「めちゃくちゃ寝言言ってたよ」

「いや…なんで居るの」


ベッドで寝ている俺の横で、ドラゴンボール11巻を読みながらポテトチップスをむさぼる。これだけヒント言ったら誰なのかわかるよね。


「打ち上げ行かなかったみたいだから暇かなって」

「…A用事あったんじゃないの」

「うん、もう終わった」


ポテチを摘みながら漫画をペラペラめくる。ああ、油つくなあその読み方されると、俺のドラゴンボール11巻が油にまみれるなあ。


「あ、そうだグク」

「なに」

「おばさんがメイド服着るような息子とは、2人きりにならない方がいいって言ってきて、腹筋が崩壊したんだけど」

「…ああ」

「説明してなかったの？」

「見に来られたらきついし」

「ああ、なるほど。わたしさっき話しておいた。おばさんめっちゃ安心してた」

「趣味で着るわけない、あんなの」

「そう？かわいかったけど」


…ん？かわいかった？
あ、じゃあ俺のメイド姿ちゃんと、しっかり、ばっちりがっつり見てくれてたって事だよね？くううう俺は全然Aを拝む余裕がなかったけど見てくれてたならそれはそれでいいや。かわいかったんだもんね。いいよね。


「…嬉しくない」


嬉しいだろ、馬鹿！布団の中でめちゃくちゃ尻尾動いてんぞ、ぶんぶん音鳴って聞こえちゃうんじゃないかぐらい動き回ってるくせして！なにが嬉しくないだ、どの口が。どの口が！


「テヒョン先輩とちゅーしてたのも笑った」

「それ一生言わないで」

「あっは、なんでよ。みんな大興奮だったよ」

「…Aは？」

「え？」

「ヒョンと俺がキスして、どう思ったの」

「どうって、…何どういうこと」

「また付き合ってない人とキスして、って思った？」

「思わないよ」

「じゃあどう思った」

「お似合いだなって思った」

「…は？」


お似合い。俺とヒョンはお似合いだそうです。上手く行くといいね、と言って俺の頭にぽんっと手を置いて笑う。お嬢さん。その手、油まみれですよね？…触ってくれるのは嬉しいけど。



.

54→←52

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す