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ヒョンと別れて、20時過ぎに家に着いた。
玄関を開けると真っ暗で、口から生まれた母ちゃんの気配もない。あーなんか今朝言ってたな、町内会の集まり…という名のマダムの集会だったかな。
ダイニングテーブルの上に、並べられた皿のラップをめくって、おかずをひとつ摘んで口に放る。ラップを元に戻して、その足で風呂場に向かいシャワーを浴びた。
あああああああ、メイドまじでやりたくねえ
我ながらかっこよかったと思うよ、思う。あの時はなんか守らなきゃってそういう気持ちが滾って、身代わりになったけどさ。俺が自分で勝手に、率先してやったことだから言いたくないけどさ。
ほんっとにやりたくねええ、泣きそう。
考えただけで無気力になる体に、脳天からシャワーを浴び続けた。
どうかこの流れ行くお湯のように俺の気持ち悪いメイド姿もみんなの記憶から溶けてなくなりますように…
鏡越しに男だろ、腹決めろよ!って右から白い服着た俺が叫んで、やめちまえよメイドなんてかっこわりーぞって左から黒い服着た俺が囁いてくる。幻覚が見える、完全に参ってるなこれは。
「あ…」
バスタオルで濡れた体を拭きながら、着替えがないことに気付く。制服のまま風呂場に直行したからか。まあ、家族も誰もいないし一旦タオル巻いておけばいいか。
洗面所の鏡に映る、筋肉まみれの自分の体をひと撫でして、できるだけの可愛い笑顔を作ってから「おかえりなさいませ、ご主人様」と言ってみる。もちろん、全身に鳥肌が立った。
あーとかうーとか呻き声を上げながら、とぼとぼと階段を上がる。
自分の部屋の扉を開けると、ベッドの上で寛ぐAと目が合う。いつもの光景に、もう驚きもないけど。
「ちょっと」
逆に今日は目を丸くして、声を荒げて驚いたのはAの方だった。
腰にタオルだけ巻いて、部屋に入ってきた俺に過剰に反応して、慌てて体を起こし壁に激突するほど距離を取ろうとする。
「ああ、居たの」
「なんて格好してんの、早く服着て」
いつもなら、いやーんとかえっち!とか言ってからかってやるんだけど、今日はもうそういう元気もないっていうか。きもい女装の事で頭がいっぱいっていうか。やいやいやり合う気になれない。
俺もベッドに片膝を乗せると、ギシッと軋んだ。
バスタオル一枚の男を視界に入れないように両手で目を覆うAその手を掴む。顔から剥がして、目が合う。
「見て、A」
「ちょっと…やだ」
「ちゃんと見て」
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daicomg84(プロフ) - 芍薬さんが大好きです。 (2022年6月11日 23時) (レス) id: 289e7de8f2 (このIDを非表示/違反報告)
ちむこ(プロフ) - あかん。おんもろすぎる(笑) (2022年2月24日 3時) (レス) @page48 id: fab33c3484 (このIDを非表示/違反報告)
ちむこ(プロフ) - やばい笑いすぎてお腹痛いです (2022年2月24日 2時) (レス) @page6 id: fab33c3484 (このIDを非表示/違反報告)
amo(プロフ) - ちやんと人の話を最後まで聞けー!!!!ジョングガー!!! (2021年7月9日 18時) (レス) id: 23a390d558 (このIDを非表示/違反報告)
Jina(プロフ) - じょんぐ、よく頑張ったよ!ご褒美にうまい棒あげる^^喉カラカラになってむせたことにして泣いちゃえTT (2021年7月9日 15時) (レス) id: 471479b0c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芍薬 | 作成日時:2021年6月28日 18時