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………来ない。
待てど暮らせど、A全然来ない。なんで。
時計の針は22時45分を指していて、門限も迫ってる。
「俺、なんかまずったかな」
濡らしたままにしておいた髪も、もうほとんど自然に乾燥していた。
そーっと窓を開けてAの部屋を覗くと、部屋の灯りはついているようだった。
Aの部屋のカーテンの隙間から、人影が見える。
部屋の中を行ったり来たりして、落ち着かない様子。
窓枠に足を投げ出して、雨樋を掴んでゆっくりと近付き隙間から中を覗き見ると、Aは部屋の中を歩き回りながら誰かと電話していた。
「…なに話してんだろう」
からから、と音が出ないようにそっとAの部屋の窓を1、2センチだけ開けた。
全神経を集中させて、耳を済ませると、うっすらと声が聞こえてきた。
「いや、…そういう訳じゃ」
「んー、はい。」
「でも…」
電話の相手の声までは聞こえないけど、Aは何か困っているような雰囲気で、言葉に詰まりながら会話を続けていた。
なんだ、誰だ。
「それは、…申し訳ないと思ってます」
「もう目は平気ですか?」
お?
「変なことするから…」
「何って…キス」
え、待って?違うよね、お願い、違うって言って。
「ふふ、」
「先輩のせいです」
違わなーい!ヒョンだ、確実に歩く性兵器ことキムテヒョン先輩だ!なんだ今のふふっての。こんなゴールデンタイムに女の子をふふって笑わせて、微笑ませるなんてけしからん過ぎるぞ。先輩のせいって何!なにが、あの人のせいでどうなっちゃったの?え、ちょっと。なんでそんなまんざらでもない顔で会話続けるの、ねえ。俺は?ヒョンから電話きて俺のことはもうすっかり過去の男になっちゃったの?ねえ。
ポケットからスマホを取り出して、ヒョンにメッセを連投した。
ヒョン
今いいですか
この間話してた例の件で聞きたいことが
今
今聞きたい
「この間話してた例の件」なんて、ないんだけどね。
スポポポポと、スタンプも連投して通話を邪魔する。
「え、あ、はい。わかりました」
「じゃあまた明日、はい。おやすみなさい」
2人の電話が終わったことを確認して、そっと自分の部屋に戻る。
すぐにヒョンから、なんの話?と返信がきたけど、スマホをベッドに投げ捨ててその場に蹲る。
浮かれてヒョンの存在忘れてたけど、あの人は俺の敵う相手じゃない。
はあ、とため息をついた。
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daicomg84(プロフ) - 芍薬さんが大好きです。 (2022年6月11日 23時) (レス) id: 289e7de8f2 (このIDを非表示/違反報告)
ちむこ(プロフ) - あかん。おんもろすぎる(笑) (2022年2月24日 3時) (レス) @page48 id: fab33c3484 (このIDを非表示/違反報告)
ちむこ(プロフ) - やばい笑いすぎてお腹痛いです (2022年2月24日 2時) (レス) @page6 id: fab33c3484 (このIDを非表示/違反報告)
amo(プロフ) - ちやんと人の話を最後まで聞けー!!!!ジョングガー!!! (2021年7月9日 18時) (レス) id: 23a390d558 (このIDを非表示/違反報告)
Jina(プロフ) - じょんぐ、よく頑張ったよ!ご褒美にうまい棒あげる^^喉カラカラになってむせたことにして泣いちゃえTT (2021年7月9日 15時) (レス) id: 471479b0c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芍薬 | 作成日時:2021年6月28日 18時