90(jiwoo) ページ16
「好きな、え?」
「好きな人ができた。相手は同業者で、二人も知ってる人。だけど、どうするつもりもない。それだけ」
予想だにしなかった返答に、私もユンソも戸惑った。しばらくの沈黙のあと、ユンソの小さな声が響いた。
「...それでいいの?」
「いい。今の私はジウオンニとユンソの方が大切だし、今の仕事でまだまだやりたいことがたくさんある。だから、こういう感情は見なかったことにした。二人も聞かなかったことにしてほしい」
もう彼女のことをサイボーグだとかそんな風に思っているわけではないけれど、そういった普通の女の子みたいな感情を、この仕事をしている間は抱かない子だと思っていた。実際、この口振りでは、本人の中でも想定外のことだったんだろう。
「そんなのって、」
「ユンソ、何言われたって私の意思は変わらない。恋愛しながら仕事ができるほど今の私が器用じゃないことくらい、二人ともわかるでしょ」
小さくため息を吐き出して、Aは眉根を寄せた。
「ごめんね」
「どうしてあんたが謝るの?人を好きになるのは悪いことじゃないでしょう」
「うん、そうだね、そうなんだけど...」
困ったように笑って、Aは俯いた。ユンソと目が合う。やめてよそんな目で見るのは、あなたにどうにもできないことを、私がどうにかできるわけないでしょう。
「わかった。もう何も言わない。あんたの好きにすればいいよ。A、ただこれだけは覚えておいて。あんたのその感情は、間違ってるものじゃない。悪いことでもない。だって、人を好きになるってとても温かい感情よ?」
目を上げたAの目に、薄らと膜が張っている。どうしていいのか、きっとわからなかったのね。あんたはとても優しいから。
「否定なんて、しないであげて。見なかったことにするなんてそんなこと、言わないで。大切にしまっておいてあげて?いつか、あんたがChocolatのサラじゃなくて、イ・Aに戻ったときに、まだそこにその感情があったらそのときは、その感情を大切にしてあげて」
「オンニ...うん、そうだね。ありがとう」
そう言ってAはようやくいつも通りの笑顔を見せた。
「ねぇ、ジウオンニ」
夕食の準備を再開したAの背中を見て、ユンソがぽつりと言葉を零した。
「Aオンニが今はその好きな人じゃなくて私達を選んでくれたんだって思ったら、嬉しいって思っちゃった。ダメだよね、私」
「そんなことないわよ。私だってそう思ったんだから」
「そっか...」
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ゆび - この作品に出会えてよかった……ありがとうございました………Chocolatちゃんたちの未来に幸あれ……🌸🌸続きが読めないことは残念ですが、またどこかでお会いできる日を楽しみにしております!! (2022年12月3日 18時) (レス) @page41 id: b9570136cf (このIDを非表示/違反報告)
smallpeach(プロフ) - 久々に読ませていただきました。この作品本当に大好きです。完結表示が出ていて寂しい気持ちもありますが、ここまで続けていただいてありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしています。 (2022年10月4日 0時) (レス) @page41 id: eabc0d3a73 (このIDを非表示/違反報告)
pn_ba1(プロフ) - こちらのお話はもう更新されないのでしょうか? (2022年8月21日 1時) (レス) id: d4e59b8d7f (このIDを非表示/違反報告)
yui.(プロフ) - 大好きな作品なので更新とても嬉しいです!これからも応援しています!^^ (2021年11月16日 7時) (レス) id: 16bd37e790 (このIDを非表示/違反報告)
ネプコ - とても面白くて一気読みしました!!!興奮が止まりませんwwお忙しいかとは思いますが、体に気をつけて更新頑張ってください!応援しています❣ (2021年10月4日 19時) (レス) @page38 id: 171786c0ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔 | 作成日時:2018年3月22日 18時