３ ページ4
事務所に入るきっかけは歌だった。
中学の頃に学校の行事で参加したミュージカルをたまたま見てた事務所の人にスカウトされて、今に至る。元々ミュージカル俳優や歌手などが夢だった私はもちろんボーカルとしてレッスンをしていたし、デビューしてもボーカルになるものだと思っていた。
「Aはラップ担当ね。ジウがメインボーカル、ユンソはサブボーカルとメインダンサーだから」
顔合わせの日、担当の人がそう言った。ラップのレッスンも受けたことがあったから、さほど驚いてはいなかったけど、少しだけ残念だなとも思った。
「Aがメインボーカルじゃなくてですか？」
だけどジウオンニは違ったらしい。苦い顔をして鋭い口調で担当の人にそう問いかけるオンニは、このときどんな気持ちだったんだろう。
「そうよ、ジウ。あなたがメインボーカル。Aはラップ」
「Aも歌うパートがあって、ラップもするってことですか？」
「いいえ。Aはしばらくの間はラップだけの予定。ある程度経ったら歌わせるかもしれないけど」
「でも、」
「ジウ、あなたの言いたいことはわかってるつもり。でも、そういう方針に決まったの。Aにはラップだけさせるって」
自分の話をしているはずなのに、私はどこか他人事みたいにそれを聞いていた。あ、私しばらく歌えないんだ。ま、いいか、一生歌えないわけじゃないし。呑気にそんなことを考えていた。
「A、あんた悔しくないの？」
担当の人が部屋を後にして３人だけになったところで、ジウオンニがそう言った。
「え？」
「私にメインボーカル取られて悔しくないの？」
まっすぐ私を見つめて、オンニは強い口調でそう言った。悔しいって何なんだろう。私の中にある感情は悔しいとは違う気がした。
事務所の人が決めたことなのだから、私よりジウオンニのほうがメインボーカルに向いてたということなんだろう。逆にラップは私が最適だったからそうなったんだろう。
私にとってはその程度のことだった。
「えっと...だって、ジウオンニのほうが歌上手いんでしょ？じゃあ、」
「私のほうが歌が上手い？それ、嫌味？」
「え、そういうつもりじゃ...」
「私には嫌味にしか聞こえなかったけど」
そう言うと、ジウオンニは苛ついた顔を隠しもせず、部屋を出て行ってしまった。
あぁ、また間違えたのかもしれない。いつもそうだった。私はときどき、間違った言葉で相手を傷つける。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1382人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美花(プロフ) - 占ツクで出会った作品の中で一番大好きな作品！何度も1から読み返してます(笑)忙しいと思いますがたくさんの読者様が待っていると思うので更新頑張って下さい！楽しみにしてます＼(^^)／ (2019年11月17日 22時) (
レス) id: 0f98af2827 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - コメントありがとうございます。主人公やメンバーたちもしっかり書きたいと思って書いてるので、そう言っていただけて本当に嬉しいです！これからも頑張りますのでよろしくお願いします！！ (2017年3月3日 2時) (レス) id: 73e1005785 (このIDを非表示/違反報告)
日(プロフ) - 面白すぎてニヤニヤしながら読んでました！すっかり主人公ちゃんペンに染まりました＼(^^)／更新楽しみに待ってます！ (2017年3月1日 17時) (レス) id: 44c4a20251 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - モカさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて本当に嬉しいです。頑張ってどんどん更新しますのでこれからもよろしくお願いします！ (2017年2月28日 18時) (レス) id: 73e1005785 (このIDを非表示/違反報告)
モカ(プロフ) - 弟マークが可愛いです！ NCTの小説の中で一番好きです！ (2017年2月28日 10時) (レス) id: bb5a902697 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朔
| 作成日時：2017年2月21日 11時
