ここにいる【銀魂】第10章 (ページ37)

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side土方

＿＿＿＿＿＿日帰り温泉から数日経ったある日の事

「ったく総悟の野郎……毎度毎度巡回サボりやがって…」

野郎関係で溢れ落ちたため息は数知れず。

お陰でニコチンの摂取量も多くなる一方で、最近は近藤さんに「吸いすぎじゃないか？」と言われる程だ。

仕方ねぇだろ、こうでもしなきゃやってられねぇ。

そして少なからずアンタのストーカーにも原因がある事を分かってほしいんだが。

何度目か分からねぇため息をついた時、ふと前に怪しい動きをした男達を見つける。

「(何やってんだコソコソと。あのサマじゃ自ら『悪い事してます』っつってるようなモンだろ…)」

ベタにも電柱の影や看板に隠れを繰り返す輩達に声を掛けようとした時＿＿＿＿＿＿

奴等の追う先を見て思わず息を呑んだ。

風になびくサラサラの髪。

ただ歩くだけでも人の目を惹きつける容姿。

何度その目線に嫉妬して、一人占めしたいと、俺だけのものにしたいと思ったか分からねぇ。

二度と恋に落ちることなんかない、そう思っていたのを容易く覆したそいつ。

「A＿＿＿？」

名を呼んだ頃には既に彼女は細い路地に入っていき、その姿を見失ってしまう。

続くように同じ路地へ入った男達を見て我に返った俺は、慌ててその後を追った。

＿＿＿＿＿＿が。

「＿＿＿！」

「あれ、十四郎？」

駆けつけた時には既に伸びていた男達。

目の前には涼しい顔をして、まるで何もなかったかのように俺に笑顔を向け、「どうしたの？」と首を傾げるA。

＿＿＿＿＿＿ぞく、と震えが走った。

一歩出遅れたのにしろ、駆けつけたのはすぐだ。

かかったとしても1、2分ぐらい。

その短時間で自分よりもでかい、成人してる男を気絶させるには相当な腕がいる。

それこそ人のありとあらゆる＂弱点＂を知ってる必要が。

「十四郎？おーい」

「…………」

「＿＿＿＿＿＿怖くなった？」

「！」

ガラリと、Aの声も表情も、雰囲気も変わる。

一瞬で光の無くなった瞳。

感情を灯さない声色。

ふ、と視線を伏せたAは消えてしまいそうな程儚く見えて＿＿＿

ぎゅ、と自分を抱きしめるように回した手が僅かに震えてるのに気付いた瞬間、俺は力いっぱいこいつを抱きしめた。

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