クズって本当ですか？

第29話 ページ30

堀「なんで今言うんですか」
深「顔見えてないから」
堀「…ずるい」
深「するいもん、俺」


思わせぶりなことばかり言って、はっきりとした言葉は言わない。私の心を繋ぎとめて離さない、そんなずるいあなたが好き。


深「あーぁ、早くクリスマスになんねぇかなー」
堀「お休みとれたんですか？」


今年のクリスマスは土日だ。私は普通の会社なので土日休みだから気にしなくていいけどふっかさんは美容師だし、ちょっと仕組みが違うだろう。


深「や、まだ出てないけど意地でもとる」


照に代わってもらうわ、と言い出して少し岩本さんに申し訳ない気持ちに。でもそこまでして会おうとしてくれてることに嬉しさを感じる。


丁寧にトリートメントをしてもらっているとレジの方から話し声が聞こえた。岩本さんとあの子の声だ、てことはもう帰るのか。

そのタイミングで私もシャンプー台から移動。レジの方を見るともう誰もいない。もちろんお店にもお客さんはいない。


深「時間経つのはえー」
堀「ですね」


もうあと5分くらいで閉店時間。外はまあ真っ暗。そりゃそうだ、仕事終わりに来てんだし。


岩「深澤さん何回シャンプーやるんですかー」


岩本さんがからかうように笑いながらこちらにやってくる。あぁ死ぬほどからかわれる時間がきた。


深「2回しかやってねぇし！」
岩「一人の子に？わざわざセット落としてまで？」
深「お前！分かってんだろ！」
岩「くははっ！Aちゃんもご苦労様」
堀「いえこちらこそ…」


後片付けをしながらこちらをからかってくる岩本さん。覚悟はしてました。あと目黒さんはまだ不思議そう。多分わかってない。


髪を乾かし終えて先程と同じようなセットをして、やっとこさ終了。なんだか長く感じた、いや実際長かったんだけど。


深「終わっちゃった」
岩「十分やっただろ」
深「そうだけどさぁ…」


名残惜しそうなふっかさん。嬉しいなぁなんて考えながらお支払い。本当にトリートメント代はいらないらしい。


堀「トリートメントありがとうございました」
深「いーえ！こちらこそ練習させてくれてありがと」


練習なんていらないですけどね、と思いながらふっかさんとお別れしてお店を出る。おそらく次会うのはクリスマスだろう。

それまでに色々と準備しないと…身なりだけじゃなくて、心の方も。

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