【vol.3】神様の気まぐれで転生トリップする事になりまして【ヒロアカ】 (ページ11)

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93話ページ11

今の私がデクくんにしてあげられること.......治癒の力はないけれど、でも強化なら.......

『サタンソウル、隷星天キョウカ』

ボロボロになった両腕に触れ、魔力を込めていく。その次は体全体へ込める。

｢...！腕が.......｣
『デクくんの両腕にかかる痛覚を一時的だけど弱めた。治癒は出来ないけど、でも痛みは抑えられたと思う。あと身体強化を。……気をつけてね、デクくん』
｢ありがとうAさん、お互い気をつけて｣

再び森の中へと消えていくデクくん。マンダレイの元へと向かったんだろう。
酷い怪我ではあったが、向かうのはデクくん1人でいいだろう。問題は森の中にいる生徒の方だ。

『先生、私はクラスの皆を探しに行ってきます』
｢分かった。この子は俺が施設まで送り届ける。さっきも言ったが、危ないと思ったらすぐに退け｣
『はい！』

一旦ここで解散し、私はデクくんが向かった先とはまた別の方向へと入っていった。

魔力の消費を抑えるためにサタンソウルを解く。
今のところ敵の気配は感じられない。が、この辺りは荼毘が起こした蒼炎と、個性による毒ガスが発生している地帯に近いはずだ。
毒ガス地帯が近くなったらサタンソウルで毒を打ち消すしかないか.......

｢全然見ねぇと思ったら、こんなとこにいたのか｣

後方から声が聞こえる。急いで振り返れば、こちらを見下ろす人影がひとつ。
暗くて姿はよく見えないが、恐らく声からして荼毘だろう。

｢殺すつもりはねぇ。上からお固く止められてるんでね。だが.......｣
『っぅあっ！』

いつの間にか距離を詰められていて、私は両腕を一纏めに掴んで拘束され、背後にある木の幹に押し付けられた。

｢それだとつまんねぇからな。少し付き合ってくれよ｣

すぐそばにある継ぎ接ぎの顔。
分身の方は恐らく施設。こんな森の中にいるのならば、きっと本物の荼毘だ。

まずいことになった。
体は拘束され、迂闊に動けない。サタンソウルに変身するにしても、荼毘の個性は掌からの発火だ。少しでも異変を感じたら燃やされる可能性がある。
私が変身するより発火するのが先か.......

何とかこの状況を打開しようと考えを巡らせていたら、拘束していない方の手で顎を掴まれた。

｢ふぅん.......アイツが言ってた通り、綺麗な顔してるんだな。羨ましいぜ｣

嘲笑うような目でこちらを見下ろしてくる荼毘。
なんだか、嫌な予感がする。