蒼い月の詩 (ページ33)

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33話ページ33

ゴールからデザームが勢いよく投げたボールを一之瀬と染岡がカットしようとするもののマークされ身動きがとれなくなる。

『パスを全て正確に繋げている…』

　ジェミニストームとはまた違った強さをもつイプシロンに翻弄されている雷門イレブンはなす術がない。
　全員がカットしようとするが完全に遊ばれている。

「木暮お前も！」

「ムリ！絶対ムリ！」

　動いていないのは木暮のみ。自分では止めることができないと慌てているがそんなことはお構いなしにゼルの“ガニメデプロトン”が放たれた。

　“ゴットハンド”で防ごうにも、この距離、早さでは間に合わない。

「“爆裂パンチ”！」

　“爆裂パンチ”を受けてもなお衰えぬ威力で円堂ごとゴールに入った。自身の両手を見てグッと握った円堂の表情は悔しげだった。

「先取点はエイリア学園イプシロン！」

(ダメじゃん雷門。デカイ口ばっか叩いて。やっぱ信じられねぇよ)

　自分からベンチにいると言ったが次々とボロボロになって倒れていく仲間の姿をただ見ているだけなのが悔しくて蒼龍は思わず歯噛みした。皆がボロボロになっていく中でただ一人フィールドを走り回っている選手がいた。

「逃げ足だけは天才的ね」

　ボールをカットすることもなくただ避けてばかりいる木暮を見て呆れたように夏未が呟いた。

『見えてるからだ。木暮は見えてるからこそあんな風に避けれるんだ』

　立ち上がって自分たちよりも一歩前で試合を見ている蒼龍から視線を外し改めて木暮を見た。
　
「まもなく3分、我らは次の一撃をもってゲームを終了する。
聞けい！人間共！我らは10日の後もう一度勝負をしてやろう！」

「10日？」

「だがお前たちは勝負のその日まで果たして生き残っていられるかな？」

　短い時間の中で既に見慣れてきたあの不敵な笑みを浮かべデザームは宣言した。

「なに…？どういう意味だ！」

　鬼道の問いに答えず無言でボールを蹴った。直線を描きながら進むボールはシュートではなくただ蹴っただけだというのにも関わらずベンチまで届くほどの凄まじい威力だ。
　蒼龍は顔を両腕で覆い目を細めて状況を確認しようとした。

「ふざけるなぁ！」

　吹雪がボールに向かって走っていくがあまりの勢いに吹っ飛ばされる。

『まずい木暮がっ！』

　吹き飛ばされた吹雪に気を取られていたがボールの進む先には木暮がいる。吹雪であれほど飛ばされたのだぶつかったら木暮はどうなる。
　案の定木暮はすっかり怯えている。