蒼い月の詩 (ページ4)

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4話ページ4

試合にむけてそれぞれ準備をしているとき片倉が蒼龍に声をかけた。

「相手はお前の実力をみたいんだろ、それなら月都のワントップでいいんじゃないか」
最初に雷門イレブンに気づいた部員、柴田が続いて

「それに、今の雷門には」

『豪炎寺修也がいない』

　柔軟を続けながら柴田の言葉を遮った。

『奈良のジェミニストーム戦以降見てないな、代わりに彼が入ったけど』
　ちらりと横目で染岡と話している吹雪を見た。“今は”随分と穏やかだな、と試合のときとは雰囲気が全く違う吹雪に蒼龍は中継を見たとき思うところがあった。

「吹雪士郎…今の雷門中と対戦するにあたって一番警戒すべき選手ですね」
(吹雪士郎、攻守でプレースタイルが違う…雰囲気も違っているように思える…。君も私と同じかな)
吹雪を横目で見ながらそんなことを考えた。
(いや考えすぎか、全く兄さんの悪い癖だな)

「気になるの？」
その様子を見たマネージャーの間宮愛(まみやあい)から声をかけられ考えごとをしていた蒼龍はハッとした。

『いやただ…』
「ただ？」
『似てる、気がするなと』
その言葉に付き合いの長い片倉と間宮愛は静かに目を伏せた。どう声をかけるべきか悩んでいたが愛は気にしていないよという風に
「そっか」
とだけ言った。続けて片倉が
「豪炎寺修也が抜けたとしてもパワーダウンした訳ではないな。吹雪士郎を警戒しつつ戦おう。お前は前線に行って思いっきり暴れてこい」
『あぁ、この試合私は最初以外指示を出さない。点を取りに行くことしか考えない、いいな』
　全員が頷くのを確認して、蒼龍は青い空を見上げ目を閉じ少しの間そうしていた。

「蒼龍って綺麗だよなぁ」
目を閉じそのままじっとしている蒼龍を見つめながら塔子は呟いた。それを聞き逃さなかった春奈がすかさず「本当に綺麗ですよね」と賛同し「もう少し怖い人だと思ってました」と続けた。
　白い肌にかかった短い銀髪が、太陽に照らされ白と見間違うほど輝いている。閉じた瞼から生えた長い睫毛が影を作り出していた。

「あの見た目からは梟雄と言われるようなプレーをするようには思えないな」
ゴーグルの底の目を細めながら鬼道が言う。

「鬼道、気になるのか？」
「あぁ、司令塔としても優秀なんだろう？この目で是非とも確かめてみたくてな」
あまり顔には出ていないが同じ司令塔として鬼道も蒼龍が気になっていたようだ。
「奥羽の梟雄…お手並み拝見とするか…」
ニイッと鬼道の口角が上がった。