蒼い月の詩 (ページ23)

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23話ページ23

ベンチに座って木暮の動きを観察している蒼龍から木暮へと視線を移し先程古株から言われたことを春奈は考えていた。

(確かに言われてみればスピードは落ちていないし、動きにもキレがある、でもあの動き…どこかで見たような…？)

　木暮の動きをよく見てどこでこの動きを見たのか記憶を辿る。どこだ…どこで見たんだ…？

(あっ！もしかしてあの子廊下や天井を拭いたりしている内に自然と力がついて…！)

　ようやく合点がいったとき周りに黒い霧が漂い始めた。
　エイリア学園だ。

「あ、そうだ蒼龍さん！」

　ベンチに蒼龍がいることを思いだしベンチの方を見るとさっきまで座っていたはずの蒼龍はブランケットを体に巻き付け横になっていた。寝るかもしれないと言っていたが本当に寝ているようだ。近寄って体を揺さぶる。

「蒼龍さん！蒼龍さん起きてください！エイリア学園が！」

『んん…エイリア学園…？』
　眠い目を擦りながら起き上がり春奈を見上げる。トロンと眠そうな目で上目遣いに見つめられた春奈はキュンとしたが今はそれどころではない。

　完全に寝起きの蒼龍の手を引っ張ってキャラバンへと戻ると既にエイリア学園が来たことを知った円堂たちが外へ出ていた。

　漫遊寺中の塔のてっぺんについてある金色の鳳凰のような像の上にイプシロンのキャプテン、デザームがいる。そこから禍禍しい黒い霧が発生している。

　グラウンドに降り立ったイプシロンに影田は
「何度言われても答えは同じです私たちに戦う意志はありません」
と静かに言い切った。だがイプシロンはそれで引き下がるような奴らではない。

　デザームは不敵な笑みを浮かべたまま「ならば仕方ない」と手に持っていた黒と赤のサッカーボールを掲げると、デザームの後ろにいた褐色の肌にグレーに近い髪の選手がボールを漫遊寺サッカー部、いや、校舎に向けて蹴った。

　校舎が音をたてて崩れた。漫遊寺の生徒たちが悲鳴をあげる。目の前で見せつけられた漫遊寺サッカー部はイプシロンを睨む。

　これでも試合をしないのか？とでも言うように不敵な笑みを深めたデザームに影田は怒りから眉間に皺を寄せ、目を閉じると
「やむを得ません…お受けいたしたしましょう！」