蒼い月の詩 (ページ26)

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26話ページ26

「11人目ならいます！木暮くんが！」

「えっ！？」

　急に名指しで呼ばれた木暮は目を白黒させて驚いたように春奈を見た。一番驚いているのは木暮だが塔子を初めとする他のメンバーもまさかの指名に驚きを隠せない。そんななかでも瞳子は驚きもせずに静かに春奈と木暮を見ていた。

　春奈はこのまま後には引けないと、
「木暮くんだってサッカー部の一員です！」

「でも補欠だろ！！大丈夫かよそんな奴いれて」

「下手にうろちょろされるとかえって邪魔になるし…」

　染岡と土門の言うことは尤もだ。ろくに練習していないような奴をいれてうろうろされても土門の言うように邪魔になるだけだ。二人の言葉に春奈は「そんなことないです！木暮くんなら大丈夫です！」と強く反論した。

「だからお願いです！お願いします！」

　木暮本人の意志そっちのけで話が進み始めている。春奈の木暮くんなら大丈夫と言う言葉に冷や汗が止まらない。

『入れてもいいんじゃない』

　本当に木暮を入れていいのか。あんなことにして奴を入れていいのか。皆がそんなことを考えていたとき蒼龍が再び口を開いた。

「お前っ、本気で言ってんのかよ！」

　驚きを隠そうともせず不服そうに染岡が蒼龍に詰め寄った。染岡を横目に見てニッと笑うと春奈と木暮の方を向き

『本気だ。さっきイプシロンが来る前に古株さんとサッカーやってたのを見てたけど、あんな風に動ける奴なかなかいないぞ。いい戦力になると思う』

　思わぬ人からの助け船に春奈は顔を輝かせ「蒼龍さん…！」と嬉しそうに名前を呼んだ。そのやり取りを見ていた円堂が「分かったよ、音無、蒼龍」と木暮をチームに入れることを了承した。皆が驚いているなかで春奈は表情を明るくさせ、蒼龍は浮かべていた笑みを深くした。

　まさか了承されると思っていなかった木暮は完全においてけぼりである。

「いいですよね？監督」

「好きにすればいいわ」

　監督である瞳子からも許可が出たので木暮も一緒に戦うこととなった。「ありがとうございます！」瞳子に向かって深く頭を下げた春奈はすぐに顔をあげ振り返り木暮に向き合う。