俺の隣は誰もいない【urt】 (ページ23)

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うらたside

「うらたさーん！起きて！」

Aが昭和特有のフライパンとお玉を使ってとてつもない騒音を出している。

「ああ！うるっせえな朝から！」

チュンチュンと小鳥が鳴いている。
差してくる日の光が心地よい。
……なんてのどかな目覚めは存在しなかった。

朝から少しの疲れを感じながら布団から身を起こす。

「もう、やっと起きた。おはよう！」

「朝からくそうるせぇ奴だな。」

と、文句を言いつつもおはよう、と返す。

「私、考えました！」

「急にどうした。」

「うらたさんのお友達にも協力してもらって、私の情報集めをすればいいんじゃないか、と。」

なるほど、こんな朝からテンションがバカ高いのはそのせいか。と一人で納得しつつ、Aに問う。

「へぇ、具体的には？」

「例えば、坂田さんは看護師さんだから病院に私の医療的な記録が残ってるかもしれないし……それに志麻さんやセンラさんはなんか人脈広そうだし……。」

志麻センの二人アバウト過ぎんだろ。

「……まあ、坂田に関しては可能性はあるかもな。ちょうど職場がこの辺だった気がするし。」

そう、坂田の職場(非常勤だが)は奇跡的に俺の新しい家から近いらしい。

「これも何かの縁！早速今から聞いてみましょ！」

「いや待て。あくまで可能性の話だし、第一患者の個人情報なんてそう簡単に探せるもんなのか？」

記録っつってもだいぶ前だろ？と付け加える。

「確かに……。でもまあやってみないと分からないし。」

そう言うなりAは俺のスマホを勝手に操作し、坂田に電話を掛け始めた。

「……って何してんだよ！？」

ってか今掛けたら……

部屋に鳴り響く呼び出し音。
そしてすぐに、

《留守番電話に接続します。ピーという音の後に……》

無機質な女性の声が流れる。

「どうせ坂田この時間は寝てるぞ。」

時計の針は10時45分を差していた。
……寝過ぎたな。