走れ私 ページ6
走って走って走って走って。
右へ曲がったところで息を止める。
体に熱が溜まっていくようだ。
私の個性が発動している筈。
そして一秒もしないうちにオールマイトが砂埃を立てながら追いついた。
が、彼に私は見えていない。
「あれ！？さっきの少女は…」
見えないは見えないのだが、音、匂い、気配というものは消せない。
だから私はそーっと移動する。
走らず、ゆっくりと。気配を殺して。
大丈夫。
気配を殺すのは得意だ。
大丈夫。
大丈夫──
「い、色葉さんっ！！で、出てきてくれないかな？！」
遅れて緑谷が登場する。
出てくる？
彼は私の個性を知っているのか？
いや、使った事はあるけど…
「話をしたいんだ！」
緑谷の言葉に私は静かに目を閉じる。
今ここで出なくても明日学校で捕まえられるだろう。
面倒ごとは嫌だ。
ならとっとと終わらせて、とっとと帰るのが手っ取り早いというもの。
私は息を吐いた。
体の熱が解放されるような、そんな感覚がする。
オールマイトと緑谷の目の前。
そこに私は姿を現した事になる。
オールマイトは少し驚き、緑谷はなぜか目を逸らした。
なぜ。
というか、改めて見るとオールマイトの風格は次元を超えている。
側にいるだけで威圧が凄い。
少し、視線を逸らしてしまった。
私は気を紛らわすためため息を吐いた。
「…オールマイトさんのさっきの姿は見た。白状する。けど、実際興味ない。誰にも言わないから帰らせてくれ」
「oh…話が早すぎるな…」
オールマイトが少々驚いているようだが関係ない。
今の私の頭の中はただ一つ。
帰りたい。帰りたい。帰りたい。帰りたい。帰りたい。帰りたい。帰りたい。帰りたい。帰りたい。
「と、言うわけでいいですか？オールマイト」
「んー。君は聞きたくないのかね？」
「教えてって言って教えてくれるような内容ではないでしょう…」
「まぁ、そうなのだけどね！」
もうキラーンって音が鳴りそうなほど歯を見せて笑いやがったぞこいつ。
いや、世界のオールマイトにこいつとかは失礼だ。
この野郎。
「はぁ…まぁ、帰ります…」
「あっ！あのっ！色葉さんっ！！」
「…何？」
緑谷は呼び止めといてオドオドし始めた。
いやまぁね？
確かに私はつり目で前髪長くて怖いんだろうけどさ？
もうちょい頑張れヒーロー志望？
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作者名：海月 星 | 作成日時：2017年6月24日 18時
