ヒーローって難しい【ヒロアカ】 (ページ26)

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彼岸花ページ26

開始数分もしないうちにどこからか爆発音が炸裂する。
地面が揺れ、どこかで戦闘しているのは確かだった。

あぁ、ついに始まってしまった。
実践なんてやった事ないし、私の本業は探偵だ。探偵に戦闘を求めるな。

とはいえ始まってしまった事は仕方がない。
私は私の考えのまま、重たい『武器』を背負いながら音の方へと走っていった。

室内はそこまで広くない。
数分もすれば、爆発音は直ぐ隣にまで近づいてこれる。

曲がり角からチラリと通路を見れば、コスチュームも顔半分が破損した緑谷と、怒りに身をまかせる爆豪が相対していた。

私は緑谷の後ろ。爆豪の顔がよく見える場所にいる。

「何で使わねえ…舐めてんのか?デク…」

「かっちゃん!」

緑谷と爆豪の声が聞こえる。
爆豪の瞳孔は開ききっており、これが犯罪者です、と言われても納得できてしまう。

右腕を掲げたまま停止ししている爆豪に、緑谷は

「もう…君を恐がるもんか!!」

そう決意を表明した。

「てめぇのストーキングならもう知ってんだろうがよぉ。
俺の爆破は掌の汗腺からニトロみてぇなもん出して爆発させてる。
『要望』通りの設計なら、この籠手はそいつを内部に溜めて…」

爆豪が籠手から飛び出すフックに指をかける。

何が起こるのか、何が来るのかまるでわからない。私は爆豪と同じ学校でも、その個性の全容を知っているわけではないのだから。

けれどその狂ったような表情を見れば嫌でも危険だと理解してしまう。
本能が、理性が、このままじゃまずいと訴える。

だから。
一回吸って。
息を吐く。

もう一度吸って──

「当たんなきゃ死なねぇよ!」

爆豪がフックを外す。

──瞬間。

私は緑谷の前に飛び出し、重く、巨大な『盾』を前にかざした。

「色──」

緑谷の声は爆発音にかき消され、その場は真っ白い閃光に消え去った。

「っ…！」

重く重くのしかかる重圧。
思った以上の重さに片膝がついてしまう。

耐えて、耐えねば、耐えるべき、耐えろ。

耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて。

──展開せよ

「『聳え立つ城塞に屍は届かない(クラスターラメリス)』──!!」

個性の本来の使い方を。

ありったけの力を。ありったけの想いを。

腹に力を込め、折れた膝を奮い立たせ。

──まるで彼岸花のように、盾から赤い鉄壁が展開された。