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呼んだ名前は誰の愛? ページ4






「もう行くから、じゃあね」



え。
もう行っちゃうの?


......いや、いいけど。ふーん。でも、数年間付き合ってきたのに、「ばいばい」がこんなにあっさりしてていいの? いいのか。ああ。振ったのはそっちだしね。そっか。いいのか。

俺はまあまあ幸せだったけど。俺はね。俺は。そっちはどうか知らないけど。興味ないよ。あ、嫌いとかそういう意味じゃなくて。まあ俺は男だし引き摺らないよ。

うん、別に、それじゃあ





「なに泣いてんの」





全身が麻痺したような昏さの中で、Aに肩をはたかれた。痛みはない。だって痛いのは、ちがうところだ。


視界がやけに濡れていると思った。涙の膜が張っていたんだ。
頬がやけにくすぐったいと思った。涙がそこを流れてたんだ。
何か、俺からぽたぽた落ちていってるなって、思ってたんだ。


俺は、泣いていたんだ。


......いや、





「そっちこそ」





目赤いじゃん。
声震えてるじゃん。

「何泣いてんの」って。泣きそうなのはどっちだよ。


......それに、


それに俺は、泣いてない。







「お腹が空いたんだよ」







あくびをした。
玉ねぎを切っていた。
フランダースの犬のラストシーンを思い出した。


そんな言い訳を浮かべる中で、ようやく、やったのことで絞り出した言葉に、堪えていた分の涙がぶわっと溢れた。
コートの袖で拭おうとしても、その隙間を縫って縫って縫って。涙は顎の先で渋滞を起こしていた。


こんな駅の入り口で、邪魔になるじゃん。目立っちゃうじゃん。Aに引かれるじゃん。そう自分に言い聞かせても、感情は正直だ。寒さで悴んだ指先に涙が当たった。もう止められないことを知った。







「お腹が空いたから、泣いたんだよ」







涙でうるうると濡れた声に、すべてを投げ出そうと腕を顔から離す。

真っ赤な目をした、Aと目が合った。


Aも、泣いていた。






「ばか」






そうだ。

俺はばかだ。


こんなにどしゃ降りの雨が降るなんて思ってなかった。
こんなに空が晴れるなんて思ってなかった。



晴れの日に、ビニール傘なんて必要なかったんだ。




カップ焼きそば食べたばかりだけど、→←段差に気づかない僕



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弥生 - 初コメです。情景が浮かんでくる素敵な文章で胸がしめつけられました。ありがとうございました。 (2019年3月23日 23時) (レス) id: 0255309c12 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - コメント失礼します〜〜!!しおちゃんだけの世界観…!!私はしおちゃんの書くこのしおちゃんだけの世界がずっとずっと大好きです…!!私もタメ口の赤葦くんに落ちている最中なので、とても楽しく、とても心揺れるお話で本当に読んでよかったです…!! (2018年12月22日 7時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
S.O(プロフ) - めちゃくちゃ感動しました!面白かったです! (2018年11月29日 16時) (レス) id: 8a35597961 (このIDを非表示/違反報告)
P.N 影黒 赤美 本名里崎雅美(プロフ) - 好きだよになるんですよね!!とっても面白かったです!! (2018年11月27日 19時) (レス) id: 1850aaea1d (このIDを非表示/違反報告)
春塩(プロフ) - ぬーすけさん» コメントありがとうございます!ひとつひとつの文章に背景を考えていたので、そこが伝わっていたのかな......?と感動している次第です。とても嬉しい感想ありがとうございました! (2018年11月26日 17時) (レス) id: c77594e32b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しお x他2人 | 作者ホームページ:  
作成日時:2018年11月25日 16時

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