とこしえばな【虎】 (ページ45)

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買い物と気分屋ページ45

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中村「ね、出掛けよーよ」

休日の朝に洗面所で歯を磨いていたら扉からひょこっと小さな頭が出て来た。

中村「歯磨きしてる時の顔俺好き」

鏡越しに目が合い、くりっとした瞳が長い前髪から覗く。

『歯磨きしてる時に来ないでください！』

うがいをし終え振り向きニヤニヤしている顔を見上げた。

中村「で？どーなの、行くの」

彼はいつもこうだ。聞くくせに答えはYESしか言わせてくれない雰囲気を出す。

『暇っちゃあ暇ですけど‥‥』

中村「じゃあ決まりね、リビングで待ってる」

そう言いながら私の頭をポンポン撫でると嬉しそうに洗面所を出て行った。

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マフラーを巻き手袋をはめて玄関を開ける。

中村「うわ、寒っ」

『ほんとだ、寒い』

‥‥‥もう冬か。こないだまで秋だったのに、はやいな

中村「手袋忘れたから手繋いでよ」

目の前にはい、と出された手をじっと見つめて溜息をつく。

『まだ家の前だから手袋取って来てください』

中村「ちぇ～、俺手袋ないもん。」

いつまで経っても出された手を握らない私に観念したのかその手はコートのポケットへと吸い込まれていった。
むすっとちょっと拗ねた顔をした中村さんは「‥‥行こっか」そう言い歩き出す。

中村さんは足が長いからどうにも歩幅が合わなくて頑張って歩く。

『‥‥それで、どこに行くんですか？』

中村「すぐ着く」

『‥‥はい、』

機嫌を損ねてしまっただろうか。

でも、だって、繋ごうとした時の中村さんが

すごく楽しそうで、嬉しそうで

その手を握ってしまったらダメな気がした。

出会った時の柔らかい中村さんがずっと忘れられなくて、日常生活の中で彼に笑顔を向けられると困ってしまう

中村「‥‥やっぱり、繋いじゃダメ？」

ほら、そうやって寂しい顔して振り向いて

私を揶揄う。

その度に私の心臓は変な音を立てる。

『‥‥ダメ』

中村さんは断られる事を予想していたのか、つまんねーのって吹き出して小石を蹴った。