とこしえばな【虎】 (ページ41)

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『では‥‥失礼、します』

宮近「緊張しすぎじゃない？(笑)」

　

洗面所の鏡の前で屈んだちゃかさんが笑う。

緊張するのもそのはず、男性の髪の毛なんて乾かしたことが無いんだから。

『熱かったら言ってくださいね‥‥？』

宮近「ん」

そっと傷付けないよう頭に触れた。

宮近「ね、待って。優しすぎない？」

鏡越しにちゃかさんと目が合う。

とろんとした表情で私のドライヤーを持つ手を握る。

宮近「もっと力強くしていーよ」

『、はい』

握られた手が、そこだけが熱い。

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宮近「ありがと～、気持ちよかった」

『良かったです(笑)でもどうして？』

宮近「や、なんか俺まだ話して無いなと思って」

『え、私とですか‥？』

宮近「うん。それに、」

『‥‥？』

コクリと喉を鳴らしたちゃかさんが私の髪に触れた。

宮近「ドライヤーなら、

まだ誰にもやってないでしょ？」

‥‥え？

宮近「松倉と仲良さそうだし、元太と海人とはよく話してるし、閑也としめとも話が合うみたいだし、如恵留にも頼りにされてるから」

宮近「なんか‥‥少し嫉妬、みたいな」

言ってる途中で恥ずかしくなったのか、赤くなった耳を触りながら俯いてしまった。

『ふふ、』

宮近「なに、」

『ちゃかさんって耳赤くなりやすいんですね』

宮近「‥‥べつに」

‥‥かわいい人。

『じゃあこれからは沢山話しましょう、私も仲良くなりたいです』

素直にそう伝えると彼は顔を上げる。

『ふふ、』

まだ少し紅潮している耳を見て笑みが溢れ、そんな私につられてちゃかさんが笑った‥‥

のも束の間。

急に肩を押され、トンと背中が壁についた。

宮近「てか、‥‥ここ密室だけど」

さっきまでの雰囲気は一変して、挑戦的な目が私を捉える。

ドライヤー中とは全く違う表情に

逃げなきゃ、そんな言葉が頭をよぎった。

『、ちゃかさ‥‥っや、』

耳に彼の指が触れる。

冷たい感覚に目を見開くと、目の前に立つちゃかさんは悪戯っ子のように笑っていて。

宮近「‥‥なんだ、Aちゃんも耳赤くなるじゃん」

そう言うと何食わぬ顔で部屋を出て行ってしまい、残された私は力が抜けてその場に座り込む。

『‥‥びっ、くりしたあ』

洗面所の鏡に映る自分は、耳どころか顔も真っ赤になっていた。