とこしえばな【虎】 (ページ2)

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あ、あれ美味しそうだな。

ザッとそこにあるものを見渡した私は、フルーツが満遍なく散りばめられたタルトに手を伸ばした。

ドンッ

タルトに手が届くまでもう少し‥‥というところで背中に重みがかかる。

なにこれ、人‥‥？

『‥‥あの、』

中村「ん～‥‥ふふ、もう飲めなぁい」

恐る恐る声を掛けると、その人の腕が私に回る。

後ろから抱き締められる形になってほんのり香るお酒の匂い。

‥‥‥もしかして酔ってる？

周りの人は皆ケーキに夢中で、困惑してる私に気付いてくれない。

気付いたとしても、恋人同士の戯れだと思われてるのか、気にも留めてくれない。

どうしよう

　

川島「あ！見つけた！海人！」

急な声と共に背中に感じていた重みがスッと無くなり、それに体が気付いた時には、私の足はフラついていた。

　

七五三掛「大丈夫？」

逞しい腕にガシッと抱き留められる。

『大丈夫です！ありがとうございます』

慌ててその人から離れて顔を上げると、その腕からは想像できない可愛らしい顔が私を心配そうに見ていた。

男の、人だよね‥？

川島「‥怪我ありませんでしたか？」

首を横に向けると、綺麗な顔立ちをした黒髪の男性が私に抱きついてたであろう人を掴みながら眉を下げている。

その酔っ払いさんはぐたーっと彼に寄りかかっていて。

『私は大丈夫です』

そう言って周りを見渡すと、丁度式場のスタッフさんが通りかかるのが見えた。

そちらに向かい声を掛け、お水をこちらに運んできて貰えるように頼む。

私を抱き留めてくれた人と、酔っ払いさんを介抱する人はそれを黙って見ていた。