□ ページ18
.
｢こら、……待ち、なさい｣
振り返る勢いで浮いた白い毛を捕まえた
そのまま引っ張られるようにしてすぐ手元から消えたけど、バツが悪そうな視線だけは向かせられた
｢今、やばいんだって。本気で｣
開閉する口から見える牙がいつもより光って見えて、予想通り吸血衝動に襲われてるのだと理解した
前回の熱ぼったい赤い目を彷彿とさせるその姿は子ども。とは罵れない色気を感じる
欲と葛藤して辛そうにまゆ根を寄せて、直ぐに私を視界から外してまた歩きはじめた彼に、そういえばと、思い出した
今いつ必要も全くないけど、今の思考能力で状況を読むほどの余力はなかったんだろう
｢───葛葉｣
2人だけの空間に余韻を残すかのように静かな時が流れた
これだけじゃなんのことか分からないだろうから、あなたの名前だと付け足す
3歩ほど離れたところにいる彼は既に歩みを止めているが、背を向けたままビタとも反応しない
｢吸ってもいいよ、葛葉｣
大きな背中なのに可哀想なほど寂しく見えて、自分に出来ることとして提示した
まだガタガタと震えるけど、何とか立ち上がって刷ってでも足を進めて、放置されてる手を握ろうかとも思ったけどその上の腕を掴む
何かと素肌を触られるのを嫌がるから、体温が低めでサラサラでまるで陶器のようで、なんなら頬擦りでもしたくなるほど触り心地のいいものだと知っているけど、これ以上刺激しては吸われ尽くされるなと苦笑した
｢くずは……。クズな俺にはピッタリだな｣
｢誰がそんな風を思ってこの名前をつけるというの
ちょっとこっち向きなさい。というか支えて。崩れ落ちそう｣
両足が笑って仕方がないのだ
腕をグイッと引っ張ると鈍いながらもこっちに向きを変えてくれて、へっぴり腰を両手で持ち支えてくれた
｢やっとこっち向いた｣
｢……オマエ、強情すぎねぇ？｣
嫌そうなのを隠しもせず表情全部使って表してきた
なんて酷い顔
それに王族にここまで無礼な態度を取ってるのだ。今更私の心臓に毛があると言われても驚きはしない
｢辛い？｣
｢まともに立てもしない奴が心配すること？｣
｢そんな人を置いてどっか行こうとしてる人は誰よ。こんなにしたのはあなたでしょ、責任取って｣
憶測だったけど、うぐ。と言葉を詰まらせているので図星だったのだろう
今度は魔術についてちゃんと教えてもらおう
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 672人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パール(プロフ) - あめさん» ありがとうございます🙇♀️頑張らせていただきますっ (3月14日 14時) (
レス) id: 1af3cf4740 (このIDを非表示/違反報告)
あめ - 遅くなりましたが続編おめでとう御座います！！これからも作者様の執筆活動応援してます！！ (3月5日 20時) (レス) id: a85ab24ed5 (このIDを非表示/違反報告)
パール(プロフ) - もなかさん» ありがとうございます。細かく書くつもりはないんですが、お陰様で進みが遅すぎて、全然本題の人間界へ言ってくれなくて困ってます笑。ちまちま更新、頑張っていきますね。ありがとうございます (3月2日 12時) (レス) id: 1af3cf4740 (このIDを非表示/違反報告)
もなか - もう本当に好きです。最高です。日々の生きがいにさせて貰っております！細かい描写の表現などいろいろ本当に好きすぎます。これからも無理をなさらない程度に頑張ってください！本当に心から応援しています！ 長文失礼しました。 (2月26日 1時) (レス) @page4 id: 3cb0a298d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
