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都心の駅は人が多い。
年代は問わず、性別問わず、国籍問わず……
日本も中心国のひとつなのだから当たり前なんだけど、足を止めようものなら一生即発しかねないほど行き交う人からは余裕を感じられない
ハルはより一層キャップを深く被ると私の二の腕を掴んで引っ張りながら歩き始めた
これはありがたい
「人しかおらん……。なんやこれ。暑苦しッ」
「だるまは飛べるんだから新鮮な空気吸えるんじゃないの?」
「オレあんまAから離れられんのよな」
思わぬ有益情報にハルの力に逆らって足を止めてしまうところだった
この背後神に距離の制約があるなんて
そうとなれば具体的にどの程度なのか知りたい
「離れられないって、どの辺まではいけるの?」
「んまぁ…そやなぁ、こっからー」
声は遠くなったものの姿が見えないのにこっからだなんて指示語で……。わかるか
苦情を入れようと顔を上げると、視界が真っ暗になって鼻を思いっきりぶつけた
「あ、ごめん。大丈夫?」
どうやら足を止めたハルの背中に激突したらしい
前方不注意。注意散漫。
明らかに私のせいなので、鼻を押えながらも「大丈夫」と何とか伝えた
「結構な衝撃だったけど」
視界にうつるハルの足がゆったりと動き私の方に身体を向けようとしていた
いい歳になって恥ずかしい……。
きっとこれからハルは様子を見るために私の顔を至近距離で覗いて、無遠慮に触診をするんだろう
まるで恋人みたいに
ふわりと人混みで熱くなった空気が強く風をまとった
その風にまるで吸い込まれるように……。否、確実にこれは肩を後ろに引かれている
突然の事でバランスなんて取れるはずなく、声にならない悲鳴が喉を震わせ情報を得ようと必死に眼孔を開いた
ハルが驚いた顔をしている。
いやいや、びっくりしてるのは私の方で
てか、はぁ?
「───ここまで」
真後ろから低く心地のいいテノールが私の耳を震わせた
犯人はだるまだって気付いて、誤魔化さなきゃと頭がフル回転し始めた
とっとっと……と、危なげ3歩後ろにステップして何とかバランスを取り戻す
心臓バックバクだ。
冷や汗もすごいことになってるし
「A、大丈夫っ!?」
ハルがよろけた私の腰と手を支えてくれる
寿命がなくなりそう……
取り敢えず痛いところは胸だけなので、ハルの心配に応えようと「平気」と声を絞り出した
「耳まで真っ赤だけど…」
ドキンっと胸がさらに早打ちした。
なんかやな感じだ、これ
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ならか(プロフ) - 最高すぎました(´;ω;`) (2月5日 20時) (レス) @page48 id: 72407f8835 (このIDを非表示/違反報告)
パール(プロフ) - きつねさん» おそまつさまです。 (12月27日 22時) (レス) id: 1af3cf4740 (このIDを非表示/違反報告)
きつね - 完結おめでとうございます。とても良かったです! (12月27日 19時) (レス) id: 4bdf75ca65 (このIDを非表示/違反報告)
ふづき(プロフ) - 今年でいちばん更新を楽しみにしてる作品です😭応援してます🙇🏻♀️ (12月23日 13時) (レス) id: 29ecdacbc9 (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - コメント失礼します。drmさんがずっと背後でやいやい言ってるの想像できて、ワ〜😭😭😭ってなりました!新鮮な設定で、文章も読みやすくとても読んでいて楽しかったです!応援してます🥹💖 (9月19日 2時) (レス) id: 563cbac78d (このIDを非表示/違反報告)
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