【CR】さよなら三角、また来て

▲ ページ18

.






｢お前がおかしいのか……｣




どんな経路を辿ってその結論に至ったかわならないけど、どうやら彼の中では無事着地したらしい




｢その、お前って言うのやめてよ。そういうのが高圧的でいや｣




｢なんだ。名前で呼んで欲しいのか？
やーだね｣



｢別にいいよ……名前じゃなくても｣



｢俺に指図するなって｣




｢はぁ……。じゃ、あなたの名前は教えてよ。私、このハンカチのためだけにあんな苦しい思いしたなんて考えたくもない｣



今でも右肩に違和感を感じる
本当に痛かったんだから


そんなことを言えばまた彼は喜びそうなので黙っておくけど





彼は少しだけ目を細めていた
まるで目が悪い人がピントを合わせるように


そしてその目がまた開かれた時には彼は何故か視線を右にずらした
｢スー、｣の意味のない言葉を漏らして、sellyだ。とそれだけ




───それだけを言った。




急にどうしたというのだ
名前のひとつやふたつ、言うのなんて容易いことだろうに


その反応は。その行動は。一体なんなんだ





｢selly。うん、覚えた｣



｢いいよ、別に覚えなくたって。役に立つことないだろ｣



｢ええそうね。sellyは意地悪ばっかりするから
でも……うん。腹立つけど、話も出来てる気がしないけど、嫌いじゃないよ｣



散々なことされたし、怖い思いをしたこともあったけど、でも不思議なこの人が本当はどんな人なのかとても気になってしまう



素直な感想。直感的感想。




嫌いじゃないからなんだとか、気になるからなんだとかじゃない。
ただまた会えたら……、それもそれで楽しいだろうなってちょっと思うだけ



｢それじゃ、私は学校に行くから
sellyも暇なら学校とか行ってみれば？意外と楽しいところもあるよ｣




｢……早く行け｣



｢はぁい｣




こっちが近づくと、まるでエビのように全力で後退りをする変な人
こっちがへっぴり腰だとありえないぐらい近づいてくるのに


人と深く関わるのが怖いんだろうか？



知らないけど




私はsellyの顔を見たまま後ろに下がって、手を振った



｢またね。｣




どこの誰とも知らないこの人ともう一度会えるように、その言葉を置いて

▲→←▲

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す