【selly】道を間違えずに進めたら良かったのに。2

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｢A｣



｢んー？｣




最後の食後のデザート

クリスマスが近いからか、真っ黒のガトーショコラは白化粧をしていた


私はフォークでそのケーキに切れ目を入れ、口に運びながら呼んできたsellyの方を見る




これがsellyとの最後の夕食だ───。


sellyの顔を見たらふとそう思った。




｢チンシムロサランヘヨ｣



｢ん？お皿…？｣



｢いや、｣




｢sellyも食べる？｣




私がお皿を回転させ、sellyの方に少しだけ押した

けどsellyは何故か視線横にずらし、すぅ……と息を吸う



私はその様子を見てsellyが何を言ったかを考えた


聞き取れなかったけど、ケーキじゃなかったか

そう思ってなに？ともう一度言おうと、口を開いたところでsellyが先に喋った




｢いや、これ意味知ってるのじゃ……ないの｣




意味？





｢え、韓国語？もっかい、もう1回言って｣




sellyとの会話はほぼ全て、いや全部と言っても過言じゃない。
日本語でおこなっている


だって私が知ってる韓国語なんてミジンコレベルなんだから聞き取れない



それにこれも日本語だと思ってしまった

韓国語か……なんて言ったんたんだろう
もう思い出そうとしてもsellyが何を言っていたか朧気で、皿って言ったようにしか思えない





｢や……なに。これ日本語で……ぁぁ……、ｽｩ……、付き合って？｣




今度こそは逃すまいとより一層の神経を耳に集めてsellyの言葉を拾った




｢いいよ。どっか行きたいってこと？｣




｢好きのことだ｣




｢sellyの好きな場所？おすすめスポットってこと？
いいね、韓国最後の思い出だ｣





最後という自分の言った言葉に少しじんと来て、私は誤魔化すように笑った

でもそんな私とは打って変わってsellyの困惑声が止まらない


小さな小さな声がポロポロとこぼれていて、｢違った？｣と一応聞き返してみる





どこかに付き合って欲しいのかと思ったけど、場所じゃなくてゲームとかを一緒にしようという話だったんだろうか



ぽんこつの私の頭ではさっきのsellyの言葉を正しく再生できないのでsellyが何を言いたかったのか

そもそも待ち構えだったのかすら分からなかった





結局───




｢ごめん……オレの日本語ゴミだ｣





───sellyは私に伝えるのを諦めてしまった。

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