勝利を手に入れるのじゃなく、敗北を手放す。【天月】

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｢映画、面白かった？｣



｢あれだわ、恥ずかしくなったわ｣



｢なんじゃそれ｣






いわゆる青春ものはやっぱり都合のいいように脚色されている

私たちの高校生時代にあんな生活を送ってた人はいないだろう



告白されたから付き合う。みたいな人ばっかりだったな……





｢A…、あのさ｣



｢ん？｣




｢なんか……、オレのせいでやなこと…、あっ…た？｣







それは───



それは、何を元に聞いてるの？






嫌な汗が流れた。

天月が知るはずないのに、妙に話が噛み合ってしまっていらない焦燥感に追われる






｢なになに、急に
私、ほぼニートよ？天月と違って表舞台と人間じゃないんだからそう簡単に辛いことなんか起きないよー｣






まるで海外のテレビショッピングのように、不自然に不器用にテンションを上げて、手を振ってそして笑ってみた




でもなんにも反応がなくて、恐る恐る顔を上げたら天月の顔が曇っていた



何も知っているはずないのに
なんでそんな顔をするの。どうして。




怖い。やだ。





｢天月っ…！｣





捕まえなきゃって思った

飛び跳ねるように地面をけって、天月の両腕を掴んだ




死んで欲しくない。私の前から居なくなって欲しくない。






ネックレスのプレゼントも、私が願う天月の感情も
全部いらないから


いなくならないで






｢A……｣




｢ご、ごめん。変に取り乱した。

私疲れてるみたいだ……なんか天月が変に見えちゃう、へへへ｣





言いたいことがなんにもいえなくて

私は唇を噛んで天月から離れた



天月は私のことを掴んでくれない。





そんな理不尽な不満を抱えて






｢変な空気になっちゃったね、私帰るよ
メンヘラ病にかかったかもしれないから｣




｢おい、待てよっ！｣





あれれ、天月が私のことを引き止めてくれてる。


嬉しい…嬉しいな





でも逃げる足を止められなかった。

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