勝利を手に入れるのじゃなく、敗北を手放す。【天月】

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冬だからか日が沈むのが早くて、映画館を出た時にはもう暗くなっていた




｢んじゃ、A。今日はありがと｣




｢いいよー。意外と映画面白かったし｣




｢だろ？｣



｢あんたも初見でしょうーが｣






家の方向はバラバラだ

昔のように学校から一緒に行ったり帰ったりする仲じゃなくなってしまっている


だから今日はここまでらしい



でも誕生日に天月に会えたんだから私は満足だ




うん。と心の中で頷いて、私は改めて天月の方を見た
相変わらずのイケメンな顔に惚れ惚れしてしまう




｢私……天月のこと…好き｣



｢………ん？｣




…………。


ん！？




バイバイと言うはずの自分の口が、何故か心を代弁していた

なんだこれ！？
そんなつもりはなかったんだ！！



内心大慌てで早く弁解しなくちゃいけないのに口がハクハクとするだけで言葉が出てこない



こんなつもりじゃなかったのにーっ！！





｢えっと……あ、ありがとう｣




結局先に天月に話されて、しかも私の好意を受け取られてしまった

違うのだ。本当に！いや違くないけど、今じゃなかったのだ



さっき見た恋愛映画のせいで私は夢を見ていたのかもしれない
あほだあほ！


考え無し！あんぽんたん！





｢な、なんかえっと……あー｣



｢おっけー。おーけーおーけー…。
もうそれ以上言わないで。でも好きなのは本当だから
じゃ私帰るね！今日はありがとうございましたっ！｣




結局私は逃げた。

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