勝利を手に入れるのじゃなく、敗北を手放す。【天月】

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｢何どうしたん｣





｢え？いや、なんでもないよ。恋愛映画はいいなって思っただけ｣





この在り来りな恋愛映画を見るのもついに3回目だ
そろそろセリフも覚えてきそうだし、なんならBGMとしてこれからの事を考えていた


別にちゃんと見てなくても感想を言えるんだから問題ない






｢………なんか体調でも悪いの？｣





天月の手が持ち上がって、私の方に伸びてきた

触れられると思った瞬間、とても怖くなって足を1歩引く



強く掴んだポシェットの紐がキュッと鳴った





｢ご、ごめん｣




｢いや、こっちこそ。びっくりしただけだから、本当に

映画面白かったね。そうそう、特にあのライバルがイケメンでさ、ヒロインを抱きしめるシーンなんかちょっと惚れそうになっちゃった｣




｢あぁ、うん。そうだね｣





あぁ気持ち悪い

この歯が浮きそうな言葉の羅列が、本音とかけはなれていて

でも私はもう、天月に｢なにか悩みがあるの？｣なんて聴けない





失敗したあの時の天月が怖くて、それを思い出す度嫌われたくない思いが前に出て本心が口から出ないのだ






｢最高の誕生日だよ、今日は｣




｢当たり前だろ｣




今あんたは、何を思いながら笑ってるの？

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