婚約者を幸せにしたい。【まふまふ】

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カゴに卵とじゃがいもとお酒を少々持って家に戻る


私の家は１階が酒屋で2階は生活区域
そしてそれより上はまた別の人が沢山住んでいる

この国では下の階ほど家賃が高い
故に私の家は若干周りよりは恵まれてはいるのだ

店持ちっという点だけで恵まれているので、先祖様に感謝である




｢ただい…………｣

…ま。


客が1人も居ないはずの店内にお母さんとお父さん
それから見知らぬ人が2人


いつもの帰宅の挨拶をその見知らぬ2人の目が止めた

かなり身なりがいい人たちだ
この辺りでは全然目にしない、布を沢山使った服を着た人




なんでそんな人がうちの家に……。



いい予感なんてするはずもない
私たち庶民は、理由もなくひたすらにお貴族様や富豪から採取されたり虐げられるのだから

この前も通り向こうのおじいさんが富豪が乗る馬車を避けることができず、そのまま……。なのにあっちは謝るどころか行方を妨害したとか、馬車を汚したとか、おかしな言いがかりを言っておじいさんの家族から諸々金品を巻き上げていた


そんな奴らなのだ。

まさかこんなお店に客としてきているわけないでしょ？
安酒をこの人たちが飲むはずがない




背後の扉ばギィーっという音を立てて閉まった
誰も動かないし、誰も喋らない時間が続いたと思う

でも下の者である私たちが主導を握るわけにはいかない
握ったらば最後、首が吹っ飛んでしまう




じわりと滲む汗が1滴床に落ちた



男2人が何かを相談し合うのが雑音として漏れ聞こえる
秘密の相談が終わると2人の足は私の方へ向いた



歯を食いしばって待ち構えるけれど、やっぱり半歩分足を後ろに滑らせる






｢お前がAか｣


｢は、はい。｣


｢面を上げろ。そしてその布っ切れをどかせ｣




上からの高圧的な態度に顔を上げても目は伏せる

いつもはどんな大柄の男のお客さんに絡まれても助けてくれるお父さんも拳を握って黙って見てることしか出来ない






震える手でカゴを床に置き、頭のナプキンを解いた



お母さんが大好きだと言ってくれる黒が重力に従ってストンと落っこちる


手入れもされてない髪の毛はごわついていて、ただ伸びているだけでお世辞にも目の前にいる彼らに比べたら綺麗とは言えない





｢噂通りの黒髪。これで間違いないな｣


｢あぁ、顔もそう悪くはない。汚れが見苦しいがその辺は洗えばなんとかなる｣



｢そうだな。決まりだ｣




何がどう決まったのか。何を話しているのか
さっぱり分からない


だけど聞いてはいけない



同じ人間でもこれほどまで違うことが初めて、おかしいと思った。

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