婚約者を幸せにしたい。【まふまふ】

Prolog ページ1

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昔から美しいものが好きだった。



きらきら光る海とか

どこまでも広がる空とか

冷たく静かな氷とか





お花ももちろん好きだし、蝶が舞う姿も好きだ。







｢Aちゃん、今日も飛びっきりに美人だねっ！｣

｢そんなこと言ってもまけませんからね｣

｢こりゃー手厳しぃっ！｣







でも決して綺麗じゃないし、小洒落てもないし、なんなら狭くて汚いけれど

お客さんが居て、お母さんもお父さんもいて、この空間が1番好きだ





お客さんに貰ったばかりの新しいエプロンを翻してお酒を運ぶ


鉱山や森に行った帰りの男たちがワイワイと騒ぎ立てる




今夜も賑やかになりそうだ。







｢どえれい綺麗なお嬢ちゃんの顔見れるだけで、こっちは儲けもんだよぉー｣


｢お客さん、あんまりうちの娘にちゃちゃ入れんでくださいよ｣


｢あら、お父さん。そんなこと言ってると、あの子はいつまでも嫁に行けませんよ｣



｢失礼ねー、私は自分の男くらい一人で探せるわよっ｣





俺が貰ってやるよーっと言う手を交わしながら注文のお酒を置いていく



こうした意味もないようなたわいのない、そう。なんにも考えずに思ったことをポロリとこぼしたような会話が、とても楽しい





───私はしがない酒場の一人娘だ。

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