婚約者を幸せにしたい。【まふまふ】

21 ページ21

.





｢姫様｣


｢はい、行きましょう。｣





明日、ついに学園に行く
この国を出るのは人生で初めてだ。そもそも王都から出たことすらない


今も部屋には下働きの男たち──この人たちは平民───が荷物を運びに出している


なんたって、4年間の寮生活だ
荷物が多い



それに何しろお嬢様っていうのは、服だけでかさばるのだから……。難儀なものだ






そしてこの忙しい前日に私をこうして呼び出してきたのは私のお父様、国王様である



ちなみに会うのは、久しぶりだ
子供になる制約の時の調印式的なあれ以来である




｢これを｣




ミラが私に向けて黒いマントを広げてきた

これまた隅から隅まで刺繍がびっしりなされてるのだからすごい
価値にしたら……と考えたことがあるが、私の物差しでは絶対に計り知れるところではないと分かったところで私は考えるのをやめた



頷くとミラが私の背後に周りぐるりと、アイラが私の髪を持ち上げ、そしてマントが肩に付けた




｢重い……｣




肩凝りそう




｢正装の際は自国の色のマントをつける決まりでございます。
どうか我慢なさってください……いえ、慣れてください｣



｢分かりましたよぉ……｣




ただでさえ、布たっぷりのドレスたちは重たいし、首飾りも頭飾りも手も耳も、とジャラジャラつけているというのに

ついに背中まで来たか……





｢準備は整いました、ミラ｣


｢では参りましょ、A様｣


｢ええ、お父様に頑張れを貰いに行くとしましょうか｣

22→←20

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す