私を彼に会わせてください【そらる】

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｢そらるさん……？｣


あ、やばい。
と思った時には時すでに遅し、目の前でしゃがむ彼はこちらを向いた


本人だ。どうしょう。どうして声掛けたの、私！


そらるさんは以前出会ってもスルーして下さいみたいなことを言っていたのに、まんま無視してしまった


いや、でも。目の前のそらるさんは傘もささずに真っ黒な猫と戯れていた

そんな彼をほっておけますか？
いや、否です。


というのは建前で、会ったことが、会えたことが嬉しくて幸せで頭が働く前に口が勝手に彼の名を口にしていたのだ


｢あ……ぁー。どうも……｣


｢すみません。プライベートなのに話しかけてしまって
でも、これから雨強くなりますよ。傘はないんですか？｣


我ながら驚く返し。上出来すぎる
頭の中ではてんやわんやと細胞が信号を送り合い、今にもショートして倒れてしまいそうだ


｢わざわざ、ありがとうございます。傘は持って出てなくて｣


すっと腰を上げた彼は身長が高くって、私のさす傘で顔が見えなくなってしまうほどである


濡れた髪から水が滴り、首を伝って口の大きな襟元へと吸い込まれていく


｢お家どこですか？｣


｢え、いや。それは……｣


｢あっ！いや‼すみません‼その、違うんです‼
雨も強くなってきましたし、遠かったら大変だなと思って、その出来心とかはないんです｣


必死に弁解するも、信じてもらえるはずがない
相手は有名人。私はそのファン


被害を被るのはどうしたって彼なのだから

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