120話 ページ30
「Aー?入って大丈夫?」
突然洗面所のドアがノックされた。精市の声だ。
「あ、大丈夫だよ」
「……ごめん。電話中だったのか」
「大丈夫。向こうも忙しいみたいだから」
〈幸村か?絶対Aを大事にしろよって伝えておけ〉
電話の向こうにも精市の声が聞こえたのか、跡部は面白そうに言った。
「はは、了解。忙しかったのに、聞いてくれてありがとね」
〈これからも、何かあったら遠慮せずに連絡しろよ〉
「うん、ありがとう」
じゃあな、と電話が終わりそうになって、慌てて止める。
「跡部くん!あの、私からなにかあげることが出来ない代わりに、跡部くんに何かあったら私も相談に乗りたい。跡部くんの相談相手になるとか、おこがましいかもしれないけど……」
〈おこがましい?わけわかんねぇ。……じゃあ、なにかあったら、お前に相談させてもらうぜ。ありがとな〉
それが跡部くんへのお返しに相当するとは思えないけど、何かしてあげたい。
急ぎの時は移動手段としてヘリを利用する彼に、私が与えられるものなんてひとつもないから、せめて。
「うん。じゃあ、またね」
〈なあ。俺様からもいいか〉
Aが電話を切ろうとすると、今度は跡部の方から引き止めてきた。
「うん!なに?」
早速相談事かと思い、電話を耳に押し付ける。
〈お前、いつまで俺様のこと『跡部くん』って呼ぶつもりなんだ?景吾でいいだろ、景吾で〉
「えっ……。名前呼び?図々しいよ」
Aが断ると、向こうから深いため息が聞こえた。
〈俺様はお前のことを友だちだと思ってたんだが、お前は違ったのか?残念だな。そうか、俺様の一方的な勘違いか〉
「いやいやそうじゃないけど!」
跡部くんが悲しそうな声を出すので、Aは慌てて否定した。
〈なら呼んでみろよ〉
.
.
.
「__景吾」
〈おう〉
「……くん」
さすがに呼び捨ては気が引けて、『くん』をつけてしまう。
跡部はまたため息をついたが、〈一応合格〉と言ってくれた。
〈じゃ、今度こそまたな〉
「うん。……また」
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桜田 しおり(プロフ) - 完結お疲れ様でした!素敵な作品に出会えて本当に幸せです、、またどこかでお会いできることを楽しみにしてます(^ ^) (2019年4月4日 17時) (レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
萌々(プロフ) - 瑠璃さん» 今の今まで寝てたんですけど、嬉しくて目覚めました!ありがとう〜〜!! (2018年12月8日 10時) (レス) id: 20628541ca (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 本当に最高でした!!跡部の友情出演もほんとに好き( ; ; )この作品に出会えてよかったです!!! (2018年12月8日 2時) (レス) id: 2eb96c37cc (このIDを非表示/違反報告)
萌々(プロフ) - 0525_snoopyさん» ほんとですかー!ありがとう!嬉しいです!機会があったら、他の作品もぜひ読んでいってください。作品って言えるレベルじゃないですけど... (2018年12月6日 20時) (レス) id: 20628541ca (このIDを非表示/違反報告)
0525_snoopy(プロフ) - とってもとっても読んでいて気持のいい作品でした!!ステキな作品に出会えてよかったです。 (2018年12月6日 19時) (レス) id: bac5a7f004 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:萌々 | 作成日時:2017年7月27日 19時