昔のいじめっ子と付き合うとか冗談じゃない

１１４話 ページ24

「俺はすーーーっっごく楽しかったっス。先輩は？楽しくなかったっスか？」


「た、楽しかった」


反射で答えると、赤也はニカッと歯を見せた。


「っスよね！楽しかったんスよ。あの日。だから……もういいです」


不思議そうに赤也を見るAの表情を見て、赤也は微笑む。


「俺も楽しかったし、それより何より、A先輩も楽しかったんでしょ？最っ高じゃないっスか、そんなの。だから、俺はもういいです」


赤也の言葉に、涙をこらえるのがまた難しくなってくる。


「俺、先輩が初恋でした。先輩と会うまで、女はわーわーうるさくて、陰口ばっかで、テニス部に暑苦しく媚び売るっていうイメージで。こんなにも強くて、下心なしに優しくて、かっこよくて、でも少し可愛くて……。こんな素敵ないる人がいるなんて知らなかったんス。でも、先輩が教えてくれた」


とうとうAの頬を涙が伝った。


赤也が指先でそれを拭う。


「教えてくれて、ありがとう。めっちゃいい思い出くれて、ありがとう。俺、先輩に色んなことありがとうって言いたいっスよ！先輩の気持ちはもらえなかったけど、俺はもうそれ以外にたっっくさん良いものもらったから」


そこまで言うと、赤也は少し屈んでAと目線を合わせた。


「今度は、俺がA先輩たくさんあげたい。だから、俺からは、先輩が幸せになるのを応援するっていう気持ちをあげるっス。＿＿なんつって！やべー！今俺めっちゃクサイこと言った！」


赤也が「恥ずかしー！」と口を開けて大笑いする。


Aも涙を浮かべながら笑ってしまった。


「……でも、本当にそう思ってますから」

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